著者
玄 順浩 阪口 玄二
出版者
公益社団法人 日本獣医学会
雑誌
日本獸醫學雜誌(The Japanese Journal of Veterinary Science) (ISSN:00215295)
巻号頁・発行日
vol.51, no.3, pp.582-586, 1989-06-15 (Released:2008-02-13)
参考文献数
11
被引用文献数
10 20

C型ボツリヌス菌芽胞(1羽当たり1×107個)を経口投与すると,食糞を可能にしたニワトリは発症,死亡したが,食糞を不可能にしたニワトリは発症しなかった.食糞可能群,不可能群とも,芽胞投与後数日間,盲腸糞にC1毒素の排泄がみられた.また,食糞可能群の発症鶏,無発症鶏とも,血中毒素が検出されたが,食糞不可能群からは検出されなかった.以上の結果から,ニワトリに経口投与されたC型ボツリヌス菌芽胞は,消化管(盲腸)内で発芽,増殖すると共に毒素を産生し,盲腸糞に一旦排泄されたのち,菌体と共に再摂取され,毒素(C1L毒素)は腺胃内で菌体と結合して安定化され,上部小腸から吸収され,ニワトリを発症させたと考えられる.このように,食糞は,ニワトリ・ボツリヌス症発病に重要な役割を果たすと考えられる.
著者
林谷 秀樹 近江 佳郎 小川 益男 福富 和夫
出版者
社団法人日本獣医学会
雑誌
日本獸醫學雜誌(The Japanese Journal of Veterinary Science) (ISSN:00215295)
巻号頁・発行日
vol.50, no.5, pp.1003-1008, 1988
被引用文献数
2 27

1981年6月から1982年5月までの1年間に関東地方で死亡し, 1動物霊園に埋葬された犬4915頭の死亡データを用いて, Chiangの生命表作成法に従って, 犬の生命表を作成した. これは家庭飼育犬について作成された最初の生命表と思われる. 生命表作成の基礎となる犬の死亡確率の姿は人のものと基本的パターンがよく類似しており, 今回作成した犬の生命表は犬の集団の死亡秩序をかなり正確に表しているものと思われた. 生命表から算出された犬の平均余命は, 0才で8.3才, 1才で8.6才, 5才で6.1才, 10才で3.5才, 15才で1.6才であった. また, 犬の健康水準の指標としては飼い主の人為的な影響を受けやすい0才の平均余命(e<SUB>0</SUB>)より1才の平均余命(e<SUB>1</SUB>)のほうが望ましいと思われた. 犬種別(雑種, 純血種に大別), 地域別(人口密度1万人以上のA地域と1万人未満のB地域に大別)にも生命表を作成し, 得られたe<SUB>1</SUB>を比較した結果, 犬種間では雑種は純血種に比べ, また地域問ではA地域はB地域に比べe<SUB>1</SUB>は有意に長かった. 以上のことから, これらの犬種間, および地域間においては平均余命の長さを規制している要因になんらかの違いのあることがうかがわれた.
著者
林 俊春 内海 文枝 高橋 令治 藤原 公策
出版者
日本獣医学会
雑誌
日本獸醫學雜誌(The Japanese Journal of Veterinary Science) (ISSN:00215295)
巻号頁・発行日
vol.42, no.2, pp.197-210, 1980
被引用文献数
1 13

臨床および病理学的に非滲出型の伝染性腹膜炎(FIP)と診断されたネコ7例について病理組織学的に検索した. 病理組織学的変化は滲出型と同じで, 主として腎, 肝, 腸間膜リンパ節, 肺, 脳, 眼に見られる血管炎および壊死をともなう肉芽腫性炎であった. 非惨出型自然例のうち1例の腎由来の材料を接種された12例の仔ネコには, 滲出型(10例), 非滲出型(2例)の両型が発現した. 自然例および伝達例の観察から, 壊死病変に先行して初期には大単核細胞におけるウイルス増殖が注目された.
著者
原 元宣 清水 武彦 福山 正文 野村 靖夫 代田 欣二 宇根 ユミ 広田 昭彦 矢後 啓司 山田 宏 石原 実
出版者
公益社団法人 日本獣医学会
雑誌
日本獸醫學雜誌(The Japanese Journal of Veterinary Science) (ISSN:00215295)
巻号頁・発行日
vol.49, no.4, pp.645-649, 1987-08-15 (Released:2008-02-13)
参考文献数
13
被引用文献数
8 9

茨城県取手市に飼育されていた犬が1985年3月27日, 激しい掻痒, 自己損傷を伴う症状を発見後に死亡, この地域ではオーエスキー病が1981年以来豚に流行していたことから本病が疑われた。剖検では病巣は検出されなかったが, 病理組織学的に延髄と頚部脊髄に著明な血管周囲の細胞浸潤, 神経膠症, ノイロノファギーを認めた。脳・脊髄の混合乳剤および肺・脾臓の混合乳剤を2頭のウサギに接種したところ, いずれも掻痒症を呈し, 4日後に死亡した。感染犬脊髄をPK-15細胞MA-104細胞に接種することにより細胞病原性を示すウイルスが分離され, 著明な円形化と巨細胞形成が認められ, ギムザ染色で核内封入体がみられた。感染PK-15細胞の電顕観察では, ヘルペスウイルス様粒子が観察され, 蛍光抗体法により抗オーエスキー病ウイルス抗体の結合が確認された。
著者
谷澤 浩二 水野 隆弘 上田 耕司 小山 生子
出版者
社団法人日本獣医学会
雑誌
日本獸醫學雜誌(The Japanese Journal of Veterinary Science) (ISSN:00215295)
巻号頁・発行日
vol.48, no.5, pp.1041-1043, 1986
被引用文献数
2

5例の猫において, 癲癇発作に対して長期のタウリン経口投与が効果的であった。抗癲癇薬を使用することなく, 脳波上の棘波と臨床症候は消失又は著明に減少した。
著者
筒井 敏彦 村尾 育子 河上 栄一 小笠 晃 Stabenfeldt George H.
出版者
JAPANESE SOCIETY OF VETERINARY SCIENCE
雑誌
日本獸醫學雜誌(The Japanese Journal of Veterinary Science) (ISSN:00215295)
巻号頁・発行日
vol.52, no.4, pp.801-806, 1990
被引用文献数
8

繁殖季節における雄猫の androgen分泌状況を明らかにするため, 末梢血中 testosterone (T)の日内変動, 精巣静脈血と末梢血中における androgen量 [androstenedione (A), 5α-dihydrotestosterone (DHT), T]の関係について観察した. また精巣の組織学的観察によって造精機能についても検討した. 実験には自然採光下の猫舎内で飼育されている年齢2-3才, 体重3.5-4.0kgの雄猫9頭を用いた. その結果, 雄猫の日内における末梢血中T量は, 個体によって大きく変動していたが, 一定の傾向は認められず, episodicな分泌であった. 精巣静脈血中における androgenは個体によってかなりの差が認められたが, 左右の間ではほ等しかった. また3種 androgen量は, それぞれ精巣静脈血と末梢血の間で相関関係が認められた(A:P<0.01, DHT:P<0.05, T:P<0.01). 精巣の組織所見は, いずれの猫においても活発な精子形成が認められ, 各個体間において精細管径および各種精細胞数にも有意差は認められなかった.
著者
板倉 智敏 中村 菊保 中塚 順子 五藤 精知
出版者
公益社団法人 日本獣医学会
雑誌
日本獸醫學雜誌(The Japanese Journal of Veterinary Science) (ISSN:00215295)
巻号頁・発行日
vol.41, no.5, pp.561-566, 1979-10-25 (Released:2008-02-13)
参考文献数
10
被引用文献数
8 12

犬ジステンパー(CD)生ワクチンを接種された3頭のレッサーパンダが, 定型的なCD症状と病変を示した. 特微病変は, 上皮細胞, 細網内皮細胞における酸好性細胞質ならびに核内封入体形成と, リンパ組織からの著明なリンパ球減数であった. 電顕下で, 細胞質封入体はnucleocapsidから構成されていた. 以上の所見は, 本動物がCDに対し高い感受性を持つこと, CD予防に際し生ワクチン使用は極めて危険であることを示唆する.
著者
丸山 総一 田中 司 勝部 泰次 仲西 寿男 貫名 正文
出版者
公益社団法人 日本獣医学会
雑誌
日本獸醫學雜誌(The Japanese Journal of Veterinary Science) (ISSN:00215295)
巻号頁・発行日
vol.52, no.6, pp.1237-1244, 1990-12-15 (Released:2008-02-14)
参考文献数
20
被引用文献数
8 11

1986年5月から1987年4月までの1年間にわたり, 神奈川県の海岸および墓地に棲息するカラスの新鮮糞便500検体より, 高温カンピロバクターの分離を試みると共に, 分離したC. jejuniについてSkirrowの生物型別ならびにPennerの血清型別を行った. 年間を通じて, 海岸のカラスの糞便270検体中169検体 (62.6%), 墓地のカラスの糞便230検体中106検体 (46.1%) から高温カンピロバクターが検出された. 本菌の月別検出率は, 海岸のカラスでは32.0%から85.0%, 墓地のカラスでは20.0%から75.0%であった. 検出された菌種は, 海岸のカラスでは, C. jejuniが150検体から, C. coliが21検体から, C. laridisが14検体から, 墓地のカラスでは, C. jejuniが80検体から, C. coliが12検体から, C. laridisが16検体からそれぞれ検出された. 両地点のカラス由来C. jejuni192株の多く (91.1%) は生物型Iであった. 192株中169株が20の血清型に分類され, 両地点とも血清型2が最も優勢であった.
著者
大竹 修 其田 三夫 松川 清 福本 真一郎 高橋 清志 黒沢 隆
出版者
公益社団法人 日本獣医学会
雑誌
日本獸醫學雜誌(The Japanese Journal of Veterinary Science) (ISSN:00215295)
巻号頁・発行日
vol.51, no.3, pp.618-620, 1989-06-15 (Released:2008-02-13)
参考文献数
8
被引用文献数
4 4

岡山県に発生した秋期結膜炎の79例について臨床学的,寄生虫学的,および病理組織学的に検索した.その結果,本症はSetaria digitataの幼若虫が結膜内に迷入して,局所性のアレルギー反応を起こすことに起因していることが判明した.治療には局所の乱刺と副腎皮質ホルモンの塗擦または同剤の結膜内注射および腫大した病変部の外科的切除が有効であった.
著者
吉川 堯 小山田 隆 吉川 博康 坂口 真紀子
出版者
公益社団法人 日本獣医学会
雑誌
日本獸醫學雜誌(The Japanese Journal of Veterinary Science) (ISSN:00215295)
巻号頁・発行日
vol.43, no.6, pp.875-881,885, 1981-12-25 (Released:2008-02-13)
参考文献数
30
被引用文献数
2 4

ワラビ(pteris aquilina)の腫瘍原性について, ラット(211例)を用いて実験的研究を行った. そして特に膀胱腫瘍について組織形態学的検討を試みた. ワラビ給与例では膀胱の他, 小腸, 皮下, 腎臓および口蓋に腫瘍の発生を認め, ワラビの著しい腫瘍原性が確認された. 組織学的に膀胱には良性から悪性性格を示す乳頭腫(60例), 移行上皮癌(9例), 腺癌(2例), 腺維腫(6例), 平滑筋肉腫(2例), 血管腫(1例)が認められた. 腫瘍の発生はワラビ多給群において, より高率かつ悪性であった. 上皮性腫瘍の発生に対して粘膜上皮層の水腫および好酸性紡錘形細胞の出現を伴う上皮層の増生並びに肥胖細胞の動態が注目された.
著者
毛利 資郎 半田 純雄 和田 俊雄 時吉 幸男
出版者
公益社団法人 日本獣医学会
雑誌
日本獸醫學雜誌(The Japanese Journal of Veterinary Science) (ISSN:00215295)
巻号頁・発行日
vol.44, no.3, pp.543-545, 1982-06-25 (Released:2008-02-13)
参考文献数
10
被引用文献数
4 5

福岡市, 長崎県, 熊本県の野犬抑留所由来イヌから, 1978年3月から1979年3月までの間に集められた血清796検体について, イヌパルボウイルスに対する HI 抗体調査を行った. その結果1878年6月以前のものはすべて陰性であったが, 1978年7月以降陽性例が認められ, 日本においても1978年7月には, すでにイヌパルボウイルスの浸潤が始まっていたことが示唆された.
著者
志賀 瓏郎 篠崎 謙一
出版者
日本獣医学会
雑誌
日本獸醫學雜誌(The Japanese Journal of Veterinary Science) (ISSN:00215295)
巻号頁・発行日
vol.42, no.2, pp.231-241, 1980
被引用文献数
2

反芻動物の低Mg血症の発症要因として, 泌乳の影響を調べるため, 泌乳羊(L)と非泌乳羊(NL)各2頭ずつに通常飼料(C期)および低Mg・低Ca飼料(E期)を与え, 両者のMg, Ca, Pの出納と血清濃度, 血漿上皮小体ホルモン(PTH)濃度を比較し, 以下の成績を得た. 1) Mg代謝: 実験期間を通じ, Lは, NLに比べ, Mgの吸収率が著明に低く, 尿中排泄率が高く, 一定の乳中分泌があり, 体内残留量は著明に少なく, 血清濃度も著明に低かった. 2) Ca代謝: 実験期間を通じ, Lは, NLに比ベ, Caの吸収率は高かったが, 内因性糞中Ca量が多く, 大量の乳中分泌があり, 体内残留量は著明に少なかった. 血清Ca濃度には, 顕著な差はなかった. 3) P代謝: Lは, 大量の乳中P分泌があり, NLに比べ, 体内残留量が著明に少なく, 血清濃度も低かった. 4) 血漿PTH濃度: LのPTHレベルは, C期には, NLのそれに比べ低い傾向を示し, E期には, 1日目に一過的に上昇した以外は, ほとんど変化しなかった. 一方, E期におけるNLのPTHレベルは, 2つのピークがみられ, 低Caに対する反応を示した. 以上の成績から, 泌乳動物は, 泌乳に伴うCa吸収率の上昇に対する抗高Ca血作用として, 血中PTH濃度の低下が示唆され, このことが, 泌乳動物のMgの利用性を低下させ, 乳中Mg分泌と相まって, 低Mg血症を誘発する可能性があると考えられた. また, Lでは, 低Mg血症により, 血中PTH濃度の上昇が抑制されると考えられた. 謝辞: 稿を終えるにあたり, 本研究の遂行に終始御協力をいただいた長岡彦光氏(現長野県庁), 小湊昭氏(現富山県庁)ほか岩手大学家畜生理学研究室各位, 上皮小体ホルモンの抗血清を御提供下さった農林水産省家畜衛生試験場 林 光昭氏, ならびに同北海道支場佐伯隆清氏に深謝する.
著者
仙波 裕之 徳力 幹彦 佐々木 伸雄 竹内 啓 臼井 和哉
出版者
公益社団法人 日本獣医学会
雑誌
日本獸醫學雜誌(The Japanese Journal of Veterinary Science) (ISSN:00215295)
巻号頁・発行日
vol.46, no.6, pp.771-781, 1984-12-15 (Released:2008-02-13)
参考文献数
21
被引用文献数
1

異常脳波の判定基準を作るために, 64頭のビーグル犬について, 年齢および意識水準の変化に対応する正常脳波の変化を調べた。鼻部に基準電極をおいた単極誘導法 (左前頭部-鼻部, 右前頭部-鼻部, 左後頭部-鼻部, 右後頭部-鼻部) と双極誘導法 (左前頭部-右前頭部, 左後頭部-右後頭部, 左前頭部-左後頭部, 右前頭部-右後頭部) の8誘導を同時記録した。生後1日にときおり出現した律動波はその後頻度を増し, 1週齢には常にみられた。2週齢では, 覚醒期と睡眠期との判別が脳波上で可能となった。5週齢では, 覚醒期, 軽睡眠期, 中等度睡眠期, および深睡眠期の区別が可能となった。これは, 脱同期, 8-13 Hzの律動波, 痛波, 初期紡錘波, および3 Hz以下の徐波などが5週齢から出現したためであった。これらの波の振幅ほ次第に増し, 10-12週齢で最大となり, その後は次第に減少した。覚醒期~深睡眠期の脳波の週齢変化から, 脳波が成犬型になる時期は, 20-30週齢であることが明らかとなった。
著者
添川 正夫 松村 好 伊沢 久夫 長野 豊幸 伊藤 元子 黎 憲祖
出版者
社団法人日本獣医学会
雑誌
日本獸醫學雜誌(The Japanese Journal of Veterinary Science) (ISSN:00215295)
巻号頁・発行日
vol.23, no.1, pp.27-31, 1961
被引用文献数
1

Methyl-bis-(β-chloroethylamine) hydrochloride, Benzyl-bis-(β-chloroethylamine) hydrochloride, Bis-(β-chloroethylamine) hydrochloride, β-Chloroethyl-amine hydrochloride, および類縁化合体 Triethyl-enmelamine を用い, これらの豚コレラ感染血液中の豚コレラ病毒の不活化作用ならびに不活化病毒の免疫原性をクリスタルヴァイオレットのそれと比較検討し, つぎの結果を得た. (1) ナイトロジエンマスタード化合体による豚コレラ病毒の不活化は第三級窒素化合体によってのみならず, 第二級窒素化合体, さらに第一級窒素化合体によっても起る. (2) ナイトロジエンマスタード化合体による豚コレラウイルスの不活化はその窒素置換基たとえばベンジル基等によるものでない. (3) トリエチレンメラミンは豚コレラ病毒を不活化する. (4) ナイトロジエンマスタード化合体による豚コレラ病毒の不活化, ならびに不活化病毒の免疫原性の浮動性について考察を行った.
著者
畔高 政行 小西 信一郎
出版者
社団法人日本獣医学会
雑誌
日本獸醫學雜誌(The Japanese Journal of Veterinary Science) (ISSN:00215295)
巻号頁・発行日
vol.50, no.4, pp.851-858, 1988
被引用文献数
4 26

1985年冬東京地区の, 約150頭を飼育する繁殖場で元気消失, 食欲不振, 発咳, 鼻漏を特徴とした犬の呼吸器疾患の流行を認めた. 罹患犬はほとんどが約3ヶ月齢で, 全発症例33頭のうち症状の激しかった4頭を剖検したところ, 主要病変は肺に限られ, 気管支上皮細胞には核内封入体が多数認められた. また合計6頭から犬アデノウイルス2型(CAV-2)と犬パラインフルエンザウイルス(CPIV)が分離され, 両者が混合感染している例も見られた. ウイルス検索と同時に実施した細菌検索の結果, Bordetella (B) bronchisepticaが純培養状に分離された例があったが, 他の分離菌株は正常菌叢の構成菌で, 特に単独で有意の菌は認められなかった. またこれらの犬における分離ウイルスに対する抗体調査の結果, CAV-2の抗体はウイルス未分離の犬で90%以上が保有しており, 高い抗体価を示す例もあった. 一方CPIVの抗体陽性例は2例のみであり, CPIVは本流行の主因とは考えられなかった. 以上の結果より, 本流行はCAV-2の感染を主とし, CPIV とB. bronchisepticaおよび正常細菌叢を構成する菌の二次増殖が関与して起こしたkennel cough complexと考えられ, わが国における本病の最初の確認および病因の解析となった.
著者
清水 晃 河野 潤一 葉杖 真二 木村 重 田村 弘
出版者
社団法人日本獣医学会
雑誌
日本獸醫學雜誌(The Japanese Journal of Veterinary Science) (ISSN:00215295)
巻号頁・発行日
vol.49, no.5, pp.819-824, 1987

実験用のマウス (ヌードマウスを含む), ラット, ウサギおよび捕獲されたドブネズミ, クマネズミ, ハツカネズミ, フェレットから分離されたStaphylococcus aureus267株について, ヒト系 (Hセット) およびウシ系 (Bセット) S. aureus型別用ファージセットを用いて, 型別を試みた。実験用小動物由来139株の型別率はHセットで75.5%, Bセットで93.5%であり, 捕獲げっ歯類由来128株の型別率はHセットで32.8%, Bセットで62.5%であった。Hセットを用いて, 同一飼育場から購入したマウス・ラットの分離株をしらべると, マウス株のすべてがII群に, ラット株の大多数がI群および混合群に属した。Bセットを用いると, 捕獲されたドブネズミ株の多くはIV群に, クマネズミ株の多くはIII群に, ハツカネズミ株の多くはII群に属した。捕獲げっ歯類由来株の型別には, Bセットが型別率, 識別能力の点でHセットより有用と思われた。