著者
松本 宏 石塚 皓造
出版者
日本雑草学会
雑誌
雑草研究 (ISSN:0372798X)
巻号頁・発行日
vol.27, no.2, pp.91-97, 1982-08-26

シメトリンの作用点と考えられる光合成系における選択作用性について検討することを目的とし,シメトリンに対して低抗性であるイネ(日本晴)と感受性であるタイヌビエから葉緑体を単離調整し,それらの電子伝達反応および光リン酸化反応における作用部位の検索,植物間における阻害度の比較を行なった。まず,電子伝達反応に対するシメトリンの作用について検討した。光化学系Iの末端から電子を受容するメチルビオローゲンを用い還元されたメチノレビオローゲンが酸素と結合して反床液中の酸素を消費する反応を利用して,酸素電極で種々の濃度のシメトリン存在下における酸素の消費速度を測定することにより,電子伝達系全体に対する作用を調べた。その結果,シメトリンは処理後ただちにかつ低濃度でこの反応を阻害することが判明し,用いたクロロフィル量(100〜120μg)でI_<50>値はイネで8×10^8M,タイヌビエで9×10^8Mであった(第1図)。つぎに,この電子伝達反床を光化学系IIの反応と光化学系Iの反応に分けて,それぞれに対するシメトリンの作用について検討した。光化学系IIに対する作用は,プラストキノン部位から電子を受容する酸化型のフェニレンジアミンを用いて,水の分解に伴う酸素の発生を酸素電極で測定することにより調べた。その結果,両植物のこの反応はシメトリンにより強い阻害をうけ,I_<50>値はともに5×10^8Mであった(第2図)。光化学系Iに対する作用は,光化学系IIからの電子の流れをDCMUで阻害した上で,アスコルビン酸で還元したDCIPを電子供与体,メチノレピオローゲンを受容体として,酸素電極で酸素消費速度を測定することにより調べた。その結果,この反応は10^4Mのシメトリンでもほとんど阻害をうけなかった(第1表)。また,NADPの光還元も同様にシメトリンの阻害をうけなかった(第2表)。光リン酸化反応に対するシメトリンの作用は,ADPからATPが生成される際にエステノレ化されて減少する反応液中の無機リンを比色法で定量することにより測定した。その結果,非環状光リン酸化反応がほぼ電子伝達反応と同程度の濃度で阻害された。環状光リン酸化反応も阻害されたが,非環状光リン酸化の阻害に比べるとやや弱いものであった(第3表)。これらの結果から,シメトリンの作用は光合成系における光化学系IIの反応と,光リン酸化反応の阻害であると考えられた。しかし,調べたすべての反応系において,イネとタイヌビエ間で葉緑体のジメトンに対する感応性に差ば認められなかった。したがって,両植物におけるシメトリンの作用力は,細胞内に形成される生理活性物質の濃度によって決定されるものと考えられ,選択作用性の要因としてはこれまで指摘してきたこれらの植物間の機能の差,すなわち,茎葉処理時においては茎葉からの吸収速度および茎葉内分解代謝能の差が,根部処理時においては根部内および茎葉内分解・代謝能の差と茎葉への移行速度の差があげられる。

言及状況

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出来なくはないです。 と言うより単離葉緑体があったからこそ葉緑体の機能が研究できる訳ですし。 例えば http://eprints.lib.hokudai.ac.jp/dspace/bitstream/2115/39114/1/67-025.pdf とか http://ci.nii.ac.jp/els/110003931541.pdf?id=ART0005387091&type=pdf& ...

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