- 著者
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原田 英昭
- 出版者
- 社団法人日本東洋医学会
- 雑誌
- 日本東洋醫學雜誌 (ISSN:02874857)
- 巻号頁・発行日
- vol.47, no.5, pp.861-867, 1997-03-20
- 被引用文献数
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3
当帰芍薬散が効果があったと思われる5症例につき報告した。臨床症状, CT, MRI, SPECTなどでアルツハイマー病と診断し, 脳代謝賦活剤を投与後しばらくしてから当帰芍薬散を上乗せして最低1年以上経過観察した。その結果, 徘徊, 多動, 意欲低下などの痴呆の周辺症状に効果を認めたものや, 知能スケールが改善した例もあり, 全体的に多少の改善, 進行の遅延が得られたという印象がある。アルツハイマー病では種々の神経伝達系の機能低下がみられ, とりわけアセチルコリン系の低下が著しい。当帰芍薬散はアセチルコリン合成酵素(CAT)の活性をたかめたり, ムスカリン性レセプターを賦活してアセチルコリンニューロンの機能を改善することが知られており, こうした面でアルツハイマー病の症状が多少改善した可能性がある。アルツハイマー病に有効な治療法はない現状では, 当帰芍薬散は試みてよい薬剤と思われる。