- 著者
-
山本 晴彦
岩谷 潔
- 出版者
- 日本作物学会
- 雑誌
- 日本作物學會紀事 (ISSN:00111848)
- 巻号頁・発行日
- vol.75, no.1, pp.73-81, 2006-01-31
- 参考文献数
- 27
- 被引用文献数
-
4
2004年台風15号は, 9月19日には九州の西海上を通過し, 夜半から翌朝にかけて強い勢力を維持しながら日本海を北東に進み, 青森県の津軽半島に上陸した後, 根室の南東海上で温帯低気圧に変わった.台風の通過時に伴い相川(佐渡市), 酒田, 秋田でそれぞれ38.3m/s, 39.6m/s, 41.1m/sの最大瞬間風速を観測し, 台風通過時には著しい少雨傾向にあった.このため, 海塩粒子が海からの強風により飛散して稲体に付着し, 通過時の少雨により塩分が洗い流されずに強風により出来た傷から侵入して細胞を脱水させる潮風害が東北・北陸地方の日本海沿岸で発生した.海岸からの距離と1穂当たりの塩分付着量(mg/穂)の関係には高い負の相関関係が認められ, 海岸付近では2.7〜3.2mgの塩分が1穂に付着し, 海岸から離れるにつれて付着量は減少し, 約1kmでは2〜2.5mg, 10kmでは0.5mg前後まで激減した.台風15号による農業被害は, 秋田県, 山形県, 新潟県(台風16号・18号を含む)でそれぞれ180億円, 102億円, 72億円で, その中でも水稲の被害額が3/4を占めた.水稲収量の平年比は, 秋田県象潟町での9.0%をはじめ, 県南部沿岸の本荘由利地域, 新潟県の佐渡市で大きく低下した.また, 潮風害の影響が顕著であった新潟県の佐渡地域では規格外が19.8%, 秋田県本荘地域でも11.1%に達し, 品質の低下が顕著に現れた.