著者
福山 正文 角野 洋二 原 元宣
出版者
麻布大学
雑誌
麻布大学雑誌 (ISSN:13465880)
巻号頁・発行日
vol.5, pp.194-198, 2002

ヒトのVero毒素産生性大腸菌(VTEC)感染症における感染源や感染経路を明らかにするため,1997年8月から1998年1月までの期間にハトは相模原市で,カラスは相模原市,川崎市,横浜市および東京都内で害鳥駆除のために捕獲した野鳥の腸管内容物を採材し,VTECの分離を試みたところ,以下の成績が得られた。1)供試した521例中32例(6.1%)からVTECが分離された。その内訳において,ハトでは相模原市262例中25例(9.5%)から,カラスでは相模原市184例中7例(3.8%)からそれぞれ分離されたが,横浜市11例,川崎市4例および東京都内60例からは1例も分離されなかった。2)分離された33株について毒素型別を行ったところ,VT1産生株が4株(6.5%),VT2産生株が27株(88.7%),VT1とVT2両毒素産生株が2株(4.8%)であった。3)分離株の血清型では,O78:H-に10株,次にO152:H-に7株,O153:H19に2株,O164:H-,O128:H-,O164/O143:H-およびO1:HUTに各1株が型別されたが,残り10株は型別不能であった。また,型別不能10株のうち,1株は自家凝集が認められた。4)供試した33株についてeacAを確認したところ,31株(93.9%)が保有していた。以上のことから,ヒト下痢症由来VTECの毒素型や血清型と一致する菌株がハトやカラスから分離されたことや病原性の発現に重要な関与が考えられるeacAを高率に保有していたことから,ヒトVTEC感染症の感染源の一つとしてこれらの鳥類も関与する可能性が考えられた。

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