著者
谷口 勇仁
出版者
北海道大学
雑誌
經濟學研究 (ISSN:04516265)
巻号頁・発行日
vol.54, no.4, pp.67-74, 2005-03-10

本稿の目的は、既存のCSR(Corporate Social Responsibility)に関する議論を検討し、「企業の論理」と「社会の論理」という2つの論理の存在を明らかにすることにある。従来、不祥事を起こした企業に対して、「CSR を果たすという当たり前のことがなぜできないのか」という意識に基づいた批判が数多くなされてきた。しかしながら、企業にとってCSR 活動を行うことは必ずしも当たり前ではない可能性もある。このような場合、批判の根底にある前提と、現実のCSR活動の根底にある前提が異なることになるため、不祥事を起こした企業に対する批判は机上の空論となる恐れがある。本稿は、このような状況を「企業の論理」と「社会の論理」のギャップとして捉えることを試みたものである。まず、既存のCSR に関する研究を「企業経営に対する提言」という観点から、「規範的アプローチ」と「手段的アプローチ」という2つのアプローチに分類して整理した。次に、この2つのアプローチを比較検討した結果、それぞれ「社会の論理」、「企業の論理」という観点からの整理であることを明らかにし、両論理の存在を導出した。さらに、2つの論理を検討した結果、「企業の論理」と「社会の論理」の間にCSR に関する解釈のギャップが存在する可能性を指摘した。

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