著者
小西 瑞恵
出版者
大阪樟蔭女子大学
雑誌
大阪樟蔭女子大学学芸学部論集 (ISSN:18807887)
巻号頁・発行日
vol.43, pp.37-49, 2006-03-08

本稿は、昨年上梓された五島邦治『京都 町共同体成立史の研究』、永島福太郎『中世畿内における都市の発達』の二著を得て、中世都市共同体についての二、三の問題を取り上げ、検討したものである。その問題の一は、中世都市民の成立についてである。平安京成立後の京都の都市民は、林屋辰三郎氏によれば「京戸」であり、それが「京童」になり、「町衆」に進化するとされていたが、五島説は初期の都市民をさす特定のことばは成立しなかったとし、摂関時代の都市民の実態を都市型官人と、より身分の低い大工・瓦師などの都市民から成り、検非違使の麾下にある保刀禰とよばれる人々が下級官人として指導的役割を果たしていたとした。この説について、戸田芳実説と網野善彦説とを比較して、その関連性と問題点を指摘した。次に、保の成立と下級官人としての保刀禰という問題を取り上げ、戸田芳実氏が明らかにした新しい町と保の出現を例にして、拙稿「中世都市の保について」(2001年)でも論じた都市住民が主体となった成立過程について再確認した。京都郊外の大山崎上下十一保や宇治の番保についても同様である。最後に、永島福太郎氏が紹介した堺についての新史料である元亨3年(1323)7月の「堺御庄上下村目録帳」(海竜王寺文書)を実際に検討し、これが摂津堺北荘のものであるという永島説を確認し、その歴史的意味について論じた。

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[後で読む] 五島邦治『京都 町共同体成立史の研究』、永島福太郎『中世畿内における都市の発達』

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