著者
内藤 錦樹
出版者
桜美林大学
雑誌
経営政策論集 (ISSN:13474634)
巻号頁・発行日
vol.4, no.1, pp.51-77, 2005-02

旅行業の原点は企画・集客・手配・添乗業務の一括請負からスタートしたものの、需要増に支えられて、それらの業務が拡大する中で分業化・分社化が進むとともに、便利なパッケージツアーとインターネットの普及等により、旅行会社はお客様との接点が少なくなる状況にあり、"消費者の旅行業離れ"を危惧する声が大きくなりつつある。そこで、お客様との接点を拡充する観点から、「旅行前」の申込み時点での相談業務の充実をはかるため、業界団体である旅行業協会等では「トラベル・カウンセラー制度」を2004年6月からスタートさせ、「旅行中」では添乗の重要性を再認識し、各社ベテラン添乗員を充ててお客様の満足度を高め、「旅行後」では趣味の各種クラブ活動の組織化・拡大化等をして、旅行業もサービス業からホスピタリティ業への進化をはかるため、その有用性を高めつつある。ホスピタリティとは「極めて質の高い満足度」と捉えると、まず、お客様との関係づくりの中から、発見したニーズをサービスに転換し、それで、お客様の満足と信頼に高めていくホスピタリティ活動へと、最終的には心の響き合う関係づくりをする経営、言い換えればマス・マーケティングからワン・トゥ・ワン(one-to-one:1対1の)マーケティングヘのCRM(Customer Relationship Management)戦略が、生き残りを目指す旅行業にも重要となっているということである。とはいえ、競合激化による低価格競争に加えて、テロ・戦争・新型肺炎等の連続で需要が急降下する業界ゆえ、契約社員拡大による人件費の変動費化や添乗員の外部委託化等により固定費の低減をはかりつつ、一定の利益確保が不可欠なため、旅行業はコストを抑える中で、ホスピタリティの発揮が求められている。本論文では、事例をあげ、ホスピタリティが直接収入増に結びつくわけではなく、むしろ、販売増によるスケールメリット発揮や集中送客、仕入れ業務、付帯販売業務等から収入増をはかるべきという考えに立っている。

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