著者
小野 秀生 Hideo ONO 京都府立大学福祉社会学部
出版者
京都府立大学福祉社会学部福祉社会研究会
雑誌
福祉社会研究 = The review of welfare society (ISSN:13471457)
巻号頁・発行日
vol.1, pp.58-68, 2000-06-01

本論文は、70年代半ば以降の福祉国家の危機と再構成の動向にかかわって、ハイエクとフリードマンに代表される新自由主義、保守主義の理論構成の特質と諸要素の意義・限界を考察したものである。ケインズ主義的福祉国家は、市場の失敗の認識を前提していたが、かれらの理論はこれを否定し、経済変動における生産の不均衡、インフレ・強制貯蓄、恣意的な所得再分配などを、あげて「設計主義」的な政府の失敗に帰着させる点で特徴的である。貨幣的景気循環論や貨幣数量説再論がそのツールとされたが、それにもとづく「最小政府」論は、福祉国家の労資関係、社会保障などの広範な社会政策、混合経済における税・財政にわたって市場原理にゆだねるイデオロギーとして採用され、マネタリスト、公共選択学派、サプライサイダーを結びつけ、福祉国家解体の論理とされた。サッチャーリズムとレーガノミックスはその典型的な実験であったが、そこでは、政府の失敗の上に、市場の失敗が重畳し、現代国家が福祉国家としてさらに再構成されねばならない課題に直面していることを示唆した。

言及状況

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編集者: 大和屋敷
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編集者: ネコバット
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