著者
津崎 哲雄 Tetsuo TSUZAKI 京都府立大学福祉社会学部
出版者
京都府立大学福祉社会学部福祉社会研究会
雑誌
福祉社会研究 = The review of welfare society (ISSN:13471457)
巻号頁・発行日
vol.4, pp.1-19, 2005-02-01

本稿では、戦後初めて全国的にメディアの注目をあびた栃木県宇都宮市における「里親による里子傷害致死事件」を素材に、現行里親制度・委託実務の現状を分析し、わが国における里親システムがいかなる特質をもつものであるか検討した。まず、わが国における里親制度のブローファイルを述べ、事件概要を紹介し、事件の要因分析をおこない、種々の側面からわが国の里親制度が諸外国のものとは著しく異なることを明らかにし、若干の他国のモデルと比較しつつ、今後の施策・実務課題や改善すべき点を明らかにした。具体的には、児童相談所の里親認定/調査の杜撰さ、委託後の指導/観察訪問が行われず、委託中の支援も皆無で、里親は全く研修を受けておらず、社会的孤立していたことが判明し、刑事裁判の判決(懲役4年実刑)が示唆するような容疑者個人に事件原因を収斂させることへの疑問を提示し、わが国の里親制度に巣食う根源的問題が真の原因であると結論づけ、今後改革を要する諸点を提示した。
著者
磯部 智也 Tomonari ISOBE 京都府立大学福祉社会学部
出版者
京都府立大学福祉社会学部福祉社会研究会
雑誌
福祉社会研究 = The review of welfare society (ISSN:13471457)
巻号頁・発行日
vol.7, pp.49-58, 2007-03-01

70年代のスタグフレーションを契機に、ケインズ主義的経済政策は終焉したと言われ、その後新自由主義が台頭し、現在では格差社会が拡大している。本論の課題は、ケインズ自身の著作を紐解くことを通じて、当時のイギリス経済の彼の見解を再考することによって、現代経済との共通の問題点を明らかにすることである。ここでは、ケインズの分配論に焦点を当て、そこから導き出される有効需要論・技術選択、資本係数などの諸論点を、置塩理論を手がかりに、ケインズ自身の分析が今なお意味を持つことを明らかにする。約80年前の彼の著作からわれわれは何を見出すことができるのか。技術選択・資本係数が決定的な要因をしめることを本論では明らかにしたい。
著者
津崎 哲雄 Tetsuo TSUZAKI 京都府立大学福祉社会学部
巻号頁・発行日
vol.4, pp.1-19, 2005-02

本稿では、戦後初めて全国的にメディアの注目をあびた栃木県宇都宮市における「里親による里子傷害致死事件」を素材に、現行里親制度・委託実務の現状を分析し、わが国における里親システムがいかなる特質をもつものであるか検討した。まず、わが国における里親制度のブローファイルを述べ、事件概要を紹介し、事件の要因分析をおこない、種々の側面からわが国の里親制度が諸外国のものとは著しく異なることを明らかにし、若干の他国のモデルと比較しつつ、今後の施策・実務課題や改善すべき点を明らかにした。具体的には、児童相談所の里親認定/調査の杜撰さ、委託後の指導/観察訪問が行われず、委託中の支援も皆無で、里親は全く研修を受けておらず、社会的孤立していたことが判明し、刑事裁判の判決(懲役4年実刑)が示唆するような容疑者個人に事件原因を収斂させることへの疑問を提示し、わが国の里親制度に巣食う根源的問題が真の原因であると結論づけ、今後改革を要する諸点を提示した。
著者
小野 秀生 Hideo ONO 京都府立大学福祉社会学部
出版者
京都府立大学福祉社会学部福祉社会研究会
雑誌
福祉社会研究 = The review of welfare society (ISSN:13471457)
巻号頁・発行日
vol.1, pp.58-68, 2000-06-01

本論文は、70年代半ば以降の福祉国家の危機と再構成の動向にかかわって、ハイエクとフリードマンに代表される新自由主義、保守主義の理論構成の特質と諸要素の意義・限界を考察したものである。ケインズ主義的福祉国家は、市場の失敗の認識を前提していたが、かれらの理論はこれを否定し、経済変動における生産の不均衡、インフレ・強制貯蓄、恣意的な所得再分配などを、あげて「設計主義」的な政府の失敗に帰着させる点で特徴的である。貨幣的景気循環論や貨幣数量説再論がそのツールとされたが、それにもとづく「最小政府」論は、福祉国家の労資関係、社会保障などの広範な社会政策、混合経済における税・財政にわたって市場原理にゆだねるイデオロギーとして採用され、マネタリスト、公共選択学派、サプライサイダーを結びつけ、福祉国家解体の論理とされた。サッチャーリズムとレーガノミックスはその典型的な実験であったが、そこでは、政府の失敗の上に、市場の失敗が重畳し、現代国家が福祉国家としてさらに再構成されねばならない課題に直面していることを示唆した。