著者
田中 敬吉
出版者
宇宙航空研究開発機構
雑誌
東京帝國大學航空研究所報告
巻号頁・発行日
vol.1, no.10, pp.247-304, 1925-03

氣〓が放射状に配列せる星型發動機に働く慣性.慣性偶力等を論ずるに當りてその固定式なると廻轉式なるとを問はず普通簡單にその構造を一般の發動機の如く單傾斜の構造と假定する.然れども星型發動機は多くの場合主連桿副連桿の構造を有して復傾斜となる.本論文はこの復傾斜を考慮してこの種の發動機に働く不平衡力.不平衡偶力等を求め且つそれ等の平衡法に就て多少論ぜしものにしてその概要は下の如し。1.單傾斜と假定せば發動機に働く慣性はhを氣〓數とせば(h-2)次まで.即ち殆んど完全に平衡の状態となるものなるが復傾斜の結果固定式の場合は(10)式廻轉式の場合は(41)式で示せる不平衡力が殘る.之を圖示せば第九圖に於て前者は圓周の軌跡を畫き後者は水平軸の方向にのみ働きてその大きさは前者の1/2に等し。2.此の星型發動機の一氣〓當りの不平衡力は8氣〓V型12氣〓W型のものより小にして6氣〓垂直.12氣〓V型のものよりも遙に大なり.此の不平衡力を減少せしむる方法は主連桿の構造の許す限り肘桿栓の距離aを小さくする事にして換言せば復傾斜を出來得る限り單傾斜に近ける事なり。3.發動機の運動部分の質量の不同及び肘桿栓の距離aの不同が發動機の不平衡力に及ぼす影響は可なりのものにして固定式の場合に就て第一章第五節に論ぜり.質量の不同は主として主連桿と副連桿の質量不同に基くものなれば出來得る限りそれ等の質量を等くする事必要なり.aの不同は壓縮比を一定にする爲に避け難きものにしてその影響は前者よりも小なり。4.慣性.慣性偶力に依る發動機の廻轉能率も單傾斜と假定せば殆んど完全に平衡状態となる可きものにして復傾斜の結果固定式は(17)と(18)式廻轉式は(45)と(46)式で與へらるる廻轉能率を惹起す.後者は前者より能率曲線に及ぼす影響大にしてその大さ前者の三倍に相當す.然れども後者に於ては廻轉する氣〓及び曲栓室がはずみ車の役目を演じその大なる影響を減殺するものと考へ得る。5.發動機の「フレーム」に與ふる偶力も復傾斜の結果固定式は(23)と(24)式廻轉式は(54)と(55)式で示さるゝ不平衡偶力を生す.而して此れ等の不平衡偶力の「フレーム」の能率曲線に與ふる影響は略等くして廻轉式の場合の廻轉能率の影響と等しき程度のものなり。本論文は栖原教授の懇切なる指導の賜なり.茲に厚く謝意を表する次第なり。

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星型エンジンの振動理論は日本でも田中敬吉により明らかにされていたが、火星エンジンでは振動問題が発生した。 CiNii 論文 -  星型發動機の不平衡力.不平衡偶力及びその平衡法. https://t.co/2GgkxYZIcJ #CiNii

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