著者
岡田 浩樹
出版者
宇宙航空研究開発機構
雑誌
宇宙航空研究開発機構研究開発報告 (ISSN:13491113)
巻号頁・発行日
vol.11, pp.15-38, 2012-03

本論文は人類の宇宙への進出について人文科学的なアプローチを行う意義について検討する.まず宇宙への進出が人文科学の学問分野において,新しいフィールとトピックをもたらすことを議論する.ついで,生活世界の概念を手がかりに,近現代に人類が経験してきた近代化およびグローバリゼーションと宇宙開発の関係について言及した後に人文科学が宇宙への進出に接近する際の3つのアプローチと時間軸,空間軸の問題について検討する.その上で,文化人類学の研究史と宇宙研究の関連について述べ,「宇宙人類学」が取り扱うことのできるトピックを列挙する.そして最後に,そうしたトピックの一つの事例として観光人類学の観点から宇宙観光することの問題を議論し,宇宙開発,宇宙への進出について文化人類学さらに人文科学からの接近の有効性を示す.
著者
柳澤 正久 佐藤 恵一 原 常典 中沢 徳郎 古矢 勝彦 内田 昌文 矢守 章 河島 信樹
出版者
宇宙航空研究開発機構
雑誌
宇宙科学研究所報告 (ISSN:02852853)
巻号頁・発行日
vol.51, pp.1-27, 1987-12

The two stage light gas guns have been used widely to study the collisions between planetesimals, from which the planets were believed to be made, meteorite impacts on the surface of the moon and planets, and high pressure states in the planetary interiors. The electromagnetic guns, especially railguns, are expected to make these researches with much higher velocity (more than 10km/sec) possible. The railgun accelerator system was set up in the Institute of Space and Astronautical Science (ISAS) in 1986,having more than 10km/sec with 1g projectile as a goal. The energy source is a 300kJ capacitor bank. The maximum velocity so far is 2.4km/sec at 108kJ with 2.4g projectile and 1.8m barrel.
著者
磯部 洋明
出版者
宇宙航空研究開発機構
雑誌
宇宙航空研究開発機構研究開発報告 (ISSN:13491113)
巻号頁・発行日
vol.11, pp.41-60, 2012-03

人類の宇宙進出の意義について,長期的な視点で人文・社会科学的な観点から検討する.まず問題を宇宙進出に伴って生じると考えられる実際的問題を簡単に述べた後,そもそも人類はなぜ宇宙を目指すのか,宇宙を知り,宇宙へ進出することが人類に何をもたらすのかという問題について,宇宙進出がもたらす希望,宇宙進出の必然性と過去の移民の歴史,神話と宗教,人間の思考と宇宙,文化的多様性などをキーワードに検討を行う.
著者
棚次 亘弘 成尾 芳博 倉谷 健治 秋葉 鐐二郎 岩間 彬
出版者
宇宙航空研究開発機構
雑誌
宇宙科学研究所報告. 特集 (ISSN:02859920)
巻号頁・発行日
vol.6, pp.55-106, 1983-03

The Institute of Space and Astronautical Science (ISAS) has developed the two thrust level of LH_2/LOX propulsion system; one is the 7-ton thrust level one and the other is the 10-ton thrust level one. The 7-ton thrust level engine was aimed at usimed at using for the second stage of the Mu vehicle. And the 10-ton thrust level engine is planned to back up the H-1 project being performed by the National Space Development Agency (NASDA). The both engines are the gas generator cycle which consists of the tubular wall thrust chamber, the "ISAS Arrangement" turbopump, the "reverse-flow" type gas generator and the solidpropellant turbine spinner. The development of the 7-ton thrust level engine has started in 1976. By 1980 have almost finished the development tests of its major components. In early 1980 the engine system has been integrated and then the verification tests have been carried out. On the other hand, the development study of the 10-ton thrust level engine started in 1979. In midyear 1981 the engine system has been completed. The both engines were combined with the battle-ship type of tank system, and stage firing tests were carried out successfully from Sep. 1981 through Apr. 1982. The 7-ton thrust level engine worked well within the range from 78% to 1l8% of its rated power. And the 10-ton thrust one worked well within the range from 75% to ll3%. In the present paper, an outline of the LH_2/LOX engine systems developed in ISAS, the progress in the establishing of an operation of engine systems and the performance capability of two systems are described.
著者
鈴木 俊之 藤田 和央
出版者
宇宙航空研究開発機構
雑誌
宇宙航空研究開発機構研究開発報告 (ISSN:13491113)
巻号頁・発行日
vol.6, pp.1-12, 2007-03

アブレータ熱防御システム信頼性向上に向けて,アーク風洞気流にさらされたアブレータ供試体の熱応答を評価する解析手法を開発した.本手法では,アブレータの熱応答を2 次元で解き,加熱面の境界条件はアーク風洞気流条件を用いたアブレータ周りの流れ場解析との連成により求めた.アーク風洞気流条件は風洞運転条件を用いた加熱器内部の流れ場解析とノズルにおける膨張流れ場解析を行うことで決定した.開発した連成解析手法を用いて,宇宙科学研究本部アーク風洞における加熱試験で得られたアブレータ熱応答の再現計算を行い,表面触媒性,表面窒化反応,表面粗さが熱応答に与える影響を調査した.実験結果との比較では,小さな触媒効率を仮定することにより測定温度に近づくことがわかった.また本加熱試験条件において表面粗さによる影響は少ないものの,窒化反応がアブレータ熱応答に与える影響は非常に大きいことが判明した.
著者
鎌田 東二
出版者
宇宙航空研究開発機構
雑誌
宇宙航空研究開発機構研究開発報告 (ISSN:13491113)
巻号頁・発行日
vol.11, pp.1-12, 2012-03

水の惑星に発生した生物種であるヒトのいとなみの中から「宗教」というヒト独自の信仰・思想と行動・儀礼が生まれてきた.すべての宗教に共通する神話と儀礼は,ヒトがこの世界や宇宙をどのように捉え,位置付け(価値付け)てきたか,その諸パターンを示しているといえる.そうした地球上で発生した宗教は,ヒトが宇宙に出る際にどのような役割や機能を果たすのか,宇宙体験と宇宙生活はヒトの心身や感覚や思想にどのような影響を与えるのか,宗教がさまざまな社会リスクにどのように対処し,その対処法は宇宙生活においてどのようにはたらきうるか,またそこにおいて,宗教はどのように変質するか,宗教が持つ力と可能性は何であるのかなどの問題を考察するのが「宇宙宗教学」(宇宙における宗教の研究)の課題である. 地球上では宗教が原因となった対立や戦争もあるが,同時に,宗教は負の感情や苦難の乗り越えや救済や深い洞察をもたらしてきた.そのような諸宗教の中で,日本の宗教および神道が持つ特色や宇宙生活における可能性について考察する.
著者
二川 健 東端 晃 石岡 憲昭
出版者
宇宙航空研究開発機構
雑誌
宇宙航空研究開発機構研究開発報告 (ISSN:13491113)
巻号頁・発行日
vol.5, pp.9-12, 2006-03

本研究では,これまで多く指摘されている宇宙空間での筋萎縮に注目し,無重力による筋萎縮の新規メカニズムを実証し,その予防の可能性を探ることを目的としている.平成17 年度では,ISS におけるフライト実験実施に向けた実験計画のベースライン化を目指し,次に挙げる地上予備研究を行った.(1)宇宙実験施行時に合わせたRNA 回収条件を確立するため,ISOGEN を用いた時とRNA Later を用いた時の回収率の違いを検討,(2)筋萎縮に重要なユビキチンリガーゼCbl-b の発現調節機構を明らかにするため,酸化ストレスと3D クリノローテーションによるCbl-b の発現調節を解析,(3)骨芽細胞におけるユビキチンリガーゼCblbの機能として,ユビキチンリガーゼCbl-b が無重力による筋萎縮だけでなく,骨萎縮にも重要な働きをしていることを明らかにした.
著者
川口 淳一郎 森田 泰弘 澤井 秀次郎
出版者
宇宙航空研究開発機構
雑誌
宇宙科学研究所報告 (ISSN:02852853)
巻号頁・発行日
vol.82, pp.1-180, 1995-09

本書は, 文部省宇宙科学研究所が平成7年1月15日に打ち上げたM-3SII型ロケット第8号機の第2段飛翔中に発生した姿勢異常について行った技術検討結果を報告するものである。本書は, M-3SII-8号機調査特別委員会の報告書ではなく, 内容は, 技術検討結果のみを報告するものである。過去, 今号機において行われた飛翔前試験の実施状況や, 体制を含めた不具合発生との関連, 再発防止などについては, 同調査特別委員会の最終報告書にゆずる。内容は, 何回かの調査特別委員会にて検討に供された技術資料を, 順次章ごとにたどる形式が採られている。本書では, 以下の同委員会報告内容の主たる点を, この冒頭で記述するにとどめる。「姿勢異常の原因は, 制御系を介した構造振動モードの励振に端を発した姿勢制御用噴射体の枯渇にあったことが明らかとなった。制御系が自励的に構造振動を発振せしめた原因は, 今第8号機におけるペイロード重量増により, 姿勢検出部における構造振動モードが不安定側に大きく転じていたことと, 同じ理由により構造振動に対する制御利得が著しく大きな値となっていたためである。M-3SII型ロケットの開発にあたっては, その初号機の飛翔前においては, 構造振動モード解析ならびにそれら柔軟性を考慮した制御系解析が行われたのであるが, 1)初号機においては剛体性が極めて高いことが数値指標で確認されていたこと, 2)姿勢検出部は初号機においては第1次構造振動モードの腹の位置にあり少なくとも線形性の成立する範囲ではペイロード重量の構造振動モードの制御安定性におよぼす感度は十分小さいと判断されていたこと, 3)今号機の飛翔以前の7回の飛翔を通じて第1次構造振動モードは励振はもちろん検出されたことがなかったことから, 今第8号機の飛翔前においては, 依然として剛体性近似が適用できると判断し, 構造振動モード解析および柔軟性を考慮した制御系検討は行われなかった。これが今回の不具合を事前に発見するにいたらなかった理由である。」