著者
岩波 佳江子
出版者
獨協医科大学
雑誌
Dokkyo journal of medical sciences (ISSN:03855023)
巻号頁・発行日
vol.32, no.1, pp.39-46, 2005-03-25
被引用文献数
2

腱への副腎皮質ステロイド注射が腱細胞のアポトーシスを誘導するかどうかを明らかにする目的で,3週齢のSprague-Dwaleyラットのアキレス腱にbetamethasone溶液50μLを計5回注入し,腱を摘出して免疫組織化学的検索を行った.アポトーシス陽性の腱細胞は,TUNEL染色で全細胞の5.2±3.9(平均±標準偏差)%,ssDNA染色で平均7.7±1.3%であった.これらは同量のPBSを注射した群,ならびに無処置群に比べて有意に高率であり,ステロイドの局所注射によって腱細胞にアポトーシスが生じることが強く示唆された.臨床的にステロイド注射の合併症として腱断裂が生じることが知られているが,その理由はまだ十分に分かっていない.本研究の結果からみて,アポトーシスによる細胞数の減少のためコラーゲン産生能が低下し,腱が脆弱となる機序が考えられる.この研究は,生体内にある腱へのステロイド注射によってアポトーシスが誘導されることを示した最初の報告である.

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