著者
葛綿 正一
出版者
沖縄国際大学
雑誌
沖縄国際大学日本語日本文学研究 (ISSN:13429485)
巻号頁・発行日
vol.9, no.2, pp.1-44, 2005-03

本稿では、『浜松中納言』『夜の寝覚』『狭衣物語』など平安後期の物語が一様に鬱屈して生気のない世界であることを論じてみたいと思う。すなわち、それは「胸ふたがり」、「屈んじ」、「結ぼほ」る世界である。あらかじめ概要を示しておこう。まず第一章では『浜松中納言』『夜の寝覚』の作者とされる菅原孝標女、『狭衣物語』の作者とされる六条斎院宣旨がともに鬱屈した魂の持ち主であることを指摘する。続く第二章では『浜松中納言』『夜の寝覚』『狭衣物語』が鬱屈して生気のない世界を描いていることを明らかにする。そして第三章では孝標女の『更級日記』を取り上げ、平安後期物語の精神を再確認することになる。なお、主な原文の引用は池田利夫校注『浜松中納言物語』(新編日本古典文学全集、小学館、二〇〇一年)、鈴木一雄校注『夜の寝覚』(同、一九九六年)、小町谷照彦・後藤祥子校注『狭衣物語』一・二(同、一九九九・二〇〇一年)、鈴木一雄校注『狭衣物語』上・下(日本古典集成、新潮社、一九八五・一九八六年)、秋山虔校注『更級日記』(同、一九八〇年)、桑原博史校注『無名草子』(同、一九七六年)により、ページ数を付す。

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