著者
関野 康治
出版者
新島学園短期大学
雑誌
新島学園短期大学紀要 (ISSN:18802141)
巻号頁・発行日
vol.25, pp.59-75, 0000

極東委員会が1946(昭和21)年7月2日に出した「日本新憲法の基本原則」という政策声明には,国務大臣は「civilian」でなければならないとする原則があった。しかし,当初の第9条が軍隊保持を一切禁じていることに疑いがなかったため,軍人の存在を前提とする文民条項が挿入されることはなかった。ところが,第9条に関して衆議院でいわゆる「芦田修正」が行われた結果〜第9条第2項に「前項の目的を達するため」という語句が追加〜それを知った極東委員会は,再度文民条項挿入問題を持ち出してきた。日本が「前項の目的」以外,たとえば「自衛目的」で,軍隊をもつ可能性があると考え,その意向は,9月24日,GHQを通じて吉田首相に伝えられた。しかし,日本側の理解は,芦田修正を受けたあとも,依然として将来も軍隊を保持することは出来ないという理解であり,連合国側の認識とは異なっていた。その上,そもそも憲法を「押し付けられた」という思いがあったため,貴族院小委員会においては,宮沢委員をはじめ3分の2の委員から憲法への不満がだされ,ようやく10月2日に憲法第66条第2項として文民条項の挿入が「多数を以って可決」された。日本国憲法の改正の議論が活発な時代背景の中で,この文民条項という地味な条文の制定過程を検討することで,日本国憲法の制定が,多様な模様を持つ複雑なものであったことを再認識することが,本稿の目的である。

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