- 著者
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高橋 宗
- 出版者
- 聖泉大学
- 雑誌
- 聖隷学園聖泉短期大学人文・社会科学論集
- 巻号頁・発行日
- vol.7, pp.A17-A41, 1991-01-31
商業活動にいろいろな影響を及ぼしている、多様な人間社会について検討することは、商店街の問題を検討する場合にも必要な事である。本研究では、同一次元で実施された購買動向調査と市民意識調査の中から、購買行動と性格特性の関係について分析した。その結果、次のような事が明らかにされた。1. 購買行動における性格特性として、主成分析の結果、4因子を抽出した。第一因子を感覚派タイプ、第二因子を現実派タイプ、第三因子を自己充実派タイプ、第四因子を知性派タイプと意味づけられた。2. これらの各因子群の項目と商店街イメージとの関係を数量化I類でもって検討された。その結果、第一因子では、商店街のファッション性と関係があり、各商店街によって違いが見られた。したがって、この因子特性の高い人は、商店街のファッション性に注目すると考えられた。第二因子では、各商店街の交通やサービスといった実利的側面との関係が見い出された。それに対して第三因子では銀座商店街のサービスや魅力性や大薮の専門店といったように、特定の商店街に対して関係が高く見られた。第四因子では、旧商店街と新商店街との工間に評価の違いがこの特性にあることが推考された。3. 性格特性のタイプは、商業施設や購入先店の選択においても違いが見られた。特に婦人・子ども服の購入先店と紳士服類の購入先店には、タイプの違いによって反転する結果が得られた。以上の結果から、商業活動に影響を与えるものとして、多数の社会的要因があると考えられる。しかし、それを検討するためには、消費活動をする人間自身に焦点をあてることの必要性が大切であることを本研究は明らかにした。特に、社会的要因の影響を受ける人間としての消費者をとらえる時、人間の性格特性を除外しては考えられないと判断された。したがって、購買動向における変動の本質的な要因を考える場合、又、商店街の活性化について考える場合でも、消費者の性格特性との関係で分析するといった試みは、今後とも、重要な課題であると考えられた