著者
多々良 美春 Hamacher Andreas 白井 彦衛
出版者
千葉大学
雑誌
千葉大学園芸学部学術報告 (ISSN:00693227)
巻号頁・発行日
vol.52, pp.33-42, 1998-03-31

浄土庭園は,浄土を象徴的に表現しているという概念に基づいて認識されている.しかし仏堂とその前方部に設けられた園池によって構成されるという条件以外に共通項はきわめて少ない.また浄土を表現するための具体的な手法についても明らかではない点が多い.本研究では,浄土庭園の初期の事例である法成寺(無量寿院)と平等院を対象に,庭園の空間構成の特徴に関してその把握を試みた.その際,庭園景観に影響する周辺景観を含めて考察を行った.その結果,法成寺では,周辺環境の影響に左右されない空間が,仏堂群に囲繞されることによって成立していたと考えられた.このような環境は,道長の個人的な信仰を支えるための予備的な空間として有効であることが推察された.また平等院では,小御所の成立によって阿弥陀堂と法会の鑑賞を主体とした,周辺景観から独立した空間の設営が実現した.従って宇治の環境,平等院の優れた庭園景観さらに阿弥陀堂との対面という求心的な空間構成は,阿弥陀に対する個人的な信仰形態を表現するものであると考えられ,法成寺と同質の性格を示していると推察する.

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編集者: Benichan
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