著者
大町 淑子
出版者
千葉大学
雑誌
千葉大学教育学部研究紀要. 第2部 (ISSN:05776856)
巻号頁・発行日
vol.29, pp.153-185, 1980-12-20

1.昭和45年の共通起床在宅率平日,土曜日の朝は7.00〜7.15をピークに急上昇し,下降している。平日の日中は2〜5%程度で,小学生がマイナス要素となり,16.00以降は男子40代に変る。夜の18.00〜21.30が40%以上の共通起床在宅率で,最高は21.00の73%である。夜70%以上の時間帯は平日の半分の30分と少なく,就床が平日より遅いので,減少のカーブは緩やかになっている。日曜日の朝の40%以上の時間帯は平日より短い30分だが,昼に1時間あり,夜の最高が80%をこえることも,他の曜日と異っている。日中も25〜40%の範囲で,全般的に率が高い。また,共通起床在宅率の高い時間帯は,平日の朝・夕の2つの山に対し,日曜日は朝・昼・夕と3つの山になっている。2.昭和45年の同一生活行動の率平日,土曜日は,朝食,夕食とその後のテレビを主行動とする時間帯で同一生活行動の率が高い。昼食の率は高いが,起床在宅率を上回っており,家庭外でとる昼食が多いため,条件からはずれている。土曜日の夜は夕食後のテレビを主行動とする時間が4時間と,平日より30分長く,また高率である。日曜日は朝の同一生活行動が低く,昼食とその後のテレビ,夕食とその後のテレビを主行動とする時間帯で高い。夕食は平日より30分早く始まるが,低下していくのは同じ時刻である。3.昭和50年と昭和45年の起床在宅率の比較昭和50年は全体的にみると,起床が遅く,また遅寝になっているが,遅寝の傾向は中学生に著しい。小・中学生の平日の日中の率は低くなったが,夕方から夜にかけても低下している。日曜日の日中,男子40代の共通起床在宅率は大巾に上昇しており,労働時間の変化などの影響がみられる。女子30代の率も増加しているが,男子40代ほどではない。4.昭和50年と昭和45年の同一生活行動の比較(1)食事の率は起床が遅くなったため,朝食も遅くなっている。平日の夕食は17.00〜19.00に減少し,19.30〜20.30にやゝ増加するというように遅い方へズレている。日曜日の昼食は昭和50年に遅くなっているが,平行に下ったというより散らばる傾向にある。(2)くつろぎの率は比率が小さいので増減も小さいが,全体としてみると50年にはかなり増加している。男子40代の日曜日のくつろぎは減っているが,交際や余暇活動に回ったとも思われる。(3)テレビの率の全般的傾向は,小学注,男子40代が増加し,中学生,、女子30代が減ったといえるが,細かくみるといろいろな変化がある。4者の中テレビの率が最もはっきり低下したのは女子30代で,日曜日の減少が著しい。5.共通起床在宅率の変化概観すると平日・土曜日に大きい変化はないが,日曜日には40%以上の共通起床在宅率の時間帯が,5時間15分から11時間30分と,2倍以上に増加し,比率の高い時間帯も多くなっている。平日の最高は73%から77%へとやゝ上昇したが,時間帯は1つ減っている。土曜日は,同順位でも率が高く,朝は減ったがその分だけ夜がふえている。日曜日は最高の共通起床在宅率こそおちたが,時間帯が大巾に拡がり,社会的要因との関連がみられる。6.同一生活行動の変化同一生活行動は,共通起床在宅のような著しい変化はみられない。平日は,時間帯が遅い方へズレただけで,主行動が同じ割合になっている。土曜日の比率はやゝ低くなって,時間帯は広がっている。日曜日は,45年に3位だった昼食時の12.15が第1位になったが,他に目につく程の変化はみられない。7.まとめとして共通起床在宅率が40%をこえる時間帯が,日曜日に2倍以上の著しい増加を示し,また男子40代の日曜日の共通起床在宅率が上昇していることをみると,労働時間の短縮や週休日の増加など社会的要因の影響の大きいことが分かる。たゞ女子30代は,女子雇用者の増大や男子に比して労働時間が余り減少していないことも関っているのか,共通起床在宅率はそれ程上昇していない。小・中学生は時間帯によっては比率が低くなり,受験戦争の過熱や塾通いの影響が憂慮される。経済成長,収入増の時期,そして石油ショックを経験しながら,物やカネよりも人間を大切にする志向がようやく高まってきた。徐々に増加している家庭内の家族共通の時間の活用について,家族の触れあいを高め,団らんを深めるように工夫し,実践していきたいと考える。

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