- 著者
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亀井 美弥子
- 出版者
- 一般社団法人 日本発達心理学会
- 雑誌
- 発達心理学研究 (ISSN:09159029)
- 巻号頁・発行日
- vol.17, no.1, pp.14-27, 2006
本研究の目的は,正統的周辺参加の枠組みから,職場の新人の語りによって,職業参加におけるアイデンティティの変化と職場共同体における学びを構造化する諸資源との関連を,新人の視点から構成される「学習のカリキュラム」に焦点化し明らかにすることである。新卒の社会人23名に就職直後と5ヶ月後の2時点でインタビューを実施した。アイデンティティをとらえるための「新人としての自己の位置づけ」の変化のタイプと,職場の学習のための構造化の資源としての,1.新人への仕事の割り当て,2.教授-学習関係の安定性との関係を検討した。その結果,初期に葛藤を感じ,その後職業参加に肯定的に向かうタイプは多くが仕事の割り当てが「実践根幹型」であり,安定した教授-学習関係という職場の構造を持っていた。また,はじめから職業参加に肯定的で変化のないタイプでは新人の仕事が熟練と分けられている「新人-熟練分担型」であった。また,職業参加から離れていくタイプでは,実践の参加から疎外されているケースがあった。異なる変化をたどった3事例の語りを検討した結果,職場実践における学びを構造化する資源の多様なありかたが,新人のアイデンティティの変容過程や学習のカリキュラムの構成に相互に密接に関係すること,また,実践に参加することおよび現前の実践を意味づけるガイドの存在が学習のカリキュラムの構成に重要であることが示唆された。