著者
阿部 邦子 宇津巻 幸子
出版者
島根県立大学短期大学部
雑誌
島根女子短期大学紀要 (ISSN:02889226)
巻号頁・発行日
vol.11, pp.16-22, 1973-03-28

地直しは被服構成の中で無視することの出来ない重要な工程の一つである。能率的で効果の高い地直しの究明を目的としこの研究を行った。婦人用ジャケットの表地として多く用いられる10種の表地を試料とし,無処理布と縮絨店処理,霧吹処理,水浸6時間処理の地直しをした布がドライクリーニング,湿式洗濯,水浸30分操作により如何なる収縮性を現わすか,又この3つの処理が如何なる効果があるかを実験し,2,3の考察を得たので報告する。各地直し後のたての収縮率はフラノ,ギャバジンは,4.5%〜7%で最大,ツィード,ヘリンボーン,オットマン,ジャージが3%前後,アムンゼン2%前後,よこは殆どの物が1.5%以内である。タータンチェック,ハイニット,デニムは0.5%前後で,たてよこ同程度の収縮率である。湿式洗濯に対してはフラノ,ギャバジン,ヘリンボーン,ジャージは処理布でもたて1回目で平均2%〜5%の収縮率を示すので,その服は着用不能になると思われる。たゞしオットマン,アムゼンの処理布及びタータンチェック,ハイニット,デニムでは1〜2回の湿式洗濯ではたてでも収縮率1%以下に止るので,薄色の服でドライクーニングでは汚れが落ちにくい物等は湿式洗濯をしてもそう悪影響はないものと思われる。ドライクリーニングに対して処理布は5回目でも大部分の試料が1.2%以下であるが,無処理布は回を重ねるごとに上昇し2%〜3%にもなるのでやはり何れかの地直しをすることが必要である。同一試料においては3種の地直し後の収縮率とその後の洗濯操作による収縮率との関係は見られないが,各試料間の収縮率は,前者と後者は大体同傾向を示す。問題の多い湿式洗濯のたて地について3種の地直しを比べて見ると霧吹処理は比較的効果は少なく,平均して良いのは縮絨店処理である。今回の水浸処理は6時間にしたが,水縮30分浸せき実験の収縮進行状態を見ると殆どの試験布が1〜2回の操作で急激に収縮し,それ以後は横ばいか極くわずか上昇するだけなので水浸時間は2〜5時間で充分だと思われる。今後の課題として他の地直しの方法や,芯地,裏地の収縮性も合せて研究し,ワンピース,ジャケット等裏付の物を製作する場合の地直しと縫製方法の関係を究明してゆきたいと思っている。この研究にあたり文化女子大学成瀬信子先生の御親切な御指導御助言に深く感謝致します。

言及状況

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