- 著者
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Farrow Trevor C. W.
四ツ谷 有喜
- 出版者
- 新潟大学
- 雑誌
- 法政理論 (ISSN:02861577)
- 巻号頁・発行日
- vol.38, no.2, pp.144-185, 2005-11-30
著者であるTrevor C.W. Farrow氏は、国際私法及び国際民事訴訟法を主たる専門とする傍ら、アルバータ大学助教授として民事訴訟法、法曹倫理、紛争処理論等を担当し、これらの科目に関する教授方法に関する研究も行っている。Farrow氏は、科研費研究プログラムの一環として新潟大学において行われた研究会の報告者として来日し、かつ日弁連司法改革調査室及び同法科大学院センターにおいて講演を行った。本稿は、新潟大学での研究会及び日弁連における講演の際に主として質問された事項、すなわち(1)カナダのロースクール制度(2)カナダの司法試験制度(3)カナダにおける法曹倫理教育(4)カナダにおける弁護技術教育(5)カナダにおける紛争処理論教育(6)カナダのロースクールにおける臨床法学教育の6点について研究会及び講演会での発言を補完するものである。周知のとおりアメリカにおける法曹養成制度とは異なりカナダにおける法曹養成制度はロースクールと並存する形で修習が行われているが、この修習の実施形態とくに授業形式を主体とするBar Admission Courseについては現在カナダのいくつかの州で改革が行われており、本稿においてはこの改革の背景及び改革後の実施形態にもふれつつ議論が進められている。さらに、法曹養成に関するカナダにおけるロースクールと修習の役割分担、特にロースクールにおいて理論教育が重視されていることと臨床法学教育との関係などについても論じられている点は日本で法学教育を行うものとして興味深い。本稿は主としてカナダにおける法曹養成のための教育方法をモデルとして日本への示唆を行うものであるが、Farrow氏は現在、カナダ全州、アメリカ、オーストラリア及びニュージーランドにおける紛争処理論に関する教育方法について調査・研究を行っており、本稿の内容は必ずしも示唆を得る対象をカナダに限定せず、法曹養成教育の国際化あるいは法の国際化と法曹養成教育との関係をも視野に入れつつ議論するものである。また、Farrow氏はカナダ型を模倣することが日本の新たな法曹養成制度にとって有意義だと述べるのではなく、「カナダにおける法学教育及び実務家養成の方法論に関する長所と短所に関して何らかの見識を」日本で法曹養成教育にたずさわる研究者及び実務家に対して与えられるであろうとの視点から本稿を執筆している。2004年にスタートした日本型ロースクール及びそこで行われるべき教育及び教授方法の開発にとって示唆に富む内容であることから、ここに紹介する。