著者
安藤 泰至
出版者
日本宗教学会
雑誌
宗教研究 (ISSN:03873293)
巻号頁・発行日
vol.80, no.2, pp.293-312, 2006

現代において「スピリチュアリティ」という語は、分野によっていくつかの異なった意味、文脈において用いられている。それらを性急に標準化しようとしたり、特定の分野における定義を固定化したりすることは、この概念がもっている豊かな可能性を損なってしまいかねない。ここではむしろ、この概念に見られるさまざまな二重性こそが、この語が用いられるそれぞれ異なった文脈における共通の背景を浮かび上がらせてくることに注目し、「スピリチュアリティ」という概念を「時代のことば」にしているそうした状況を、それぞれの理論的・実践的課題に即した形で受け取りなおすことによって、各々のスピリチュアリティ概念やその理解が内側から開かれていく可能性を探ってみたい。そのためには、「スピリチュアリティ」という概念を用いる各々の専門職や学問・実践領域の間の越境によって、特定の領域の中に閉じられがちな(異なった)スピリチュアリティ概念やその理解を、生死をめぐる具体的な課題の中で突き合わせる必要があろう。

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