- 著者
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高橋 康
西来 邦章
- 出版者
- 日本地質学会
- 雑誌
- 地質學雜誌 (ISSN:00167630)
- 巻号頁・発行日
- vol.112, no.9, pp.549-567, 2006-09-15
- 被引用文献数
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5
4
本研究では,北八ヶ岳火山の北麓に分布する前期更新世火山岩類の層序を確立し,計60個の岩石試料について全岩化学分析を行った.北八ヶ岳火山は1.2Ma頃に活動を開始し,1.0Ma頃まで玄武岩質溶岩の噴出を繰り返して成層火山体を形成した.1.0Ma以降は安山岩〜デイサイト溶岩が噴出し0.9Ma頃に一旦活動を終了した.中期更新世に入り活動を再開して安山岩〜デイサイト溶岩が噴出し成層火山や溶岩ドームを形成した.北八ヶ岳火山噴出物の全岩組成は,更新世前期と中期以降に噴出したものとでMgO量が明瞭に異なり,近隣の諸火山の全岩組成と比較すると,北八ヶ岳火山の西方に分布する塩嶺火山岩類と主要元素組成が類似する.北八ヶ岳〜塩嶺地域では,前期更新世に約200km^3におよぶマグマが噴出している.このような大量のマグマ噴出は,当地域を通る糸魚川-静岡構造線の横ずれ断層活動に伴って生じた局所的な引張応力場のもとで行われた可能性がある.