著者
葛西 俊治
出版者
札幌学院大学人文学会
雑誌
札幌学院大学人文学会紀要 (ISSN:09163166)
巻号頁・発行日
no.78, pp.1-26, 2005-11

数量的アプローチのいくつかの基本的要点が一般意味論の慎重な姿勢によって批判的に概観され,J.S.Millによる「自然の斉一性」公理に見られるように帰納と演繹が非実現的な論理的要求であること,また,「人は一様ではない」ことから心理学においては現象の複数性あるいは反復性は自明とはされないことが示された。そして,以下の基本的な要件,1)言語的テキストに「事実性」を想定すること,2)C.S.Peirceが提起したアブダクションに基づく論理的推論を行うこと,3)解釈的に導出されたモデルに提喩的な理解と一般化を施すこと,を取り入れた解釈的心理学的アプローチが提起された。アブダクションに基づいて原因結果のモデルを構築する方法は,面談対象者の行動と認知についての個性記述的なモデルを生み出し,そうした個々のモデルは臨床心理学的事例研究や病跡学におけるように提喩的に一般化されるものとなる。質的研究における一つの論題「人は死に際してなぜ天候について語るのか」を例にとり,多重併存モデルおよび提喩的に抽象化された上位モデルについての議論がなされた。

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