著者
湯本 誠
出版者
札幌学院大学
雑誌
札幌学院大学人文学会紀要 (ISSN:09163166)
巻号頁・発行日
vol.78, pp.67-99, 2005-11-18

本稿はトヨタ自動車における長期勤続者の企業内キャリアの新たな動向に関する事例研究である。1990年代における技能系人事制度改革によって,主にスタッフ機能を担う専門技能職が新設されると同時に,労働組織はライン型組織からライン・スタッフ型組織に切り替えられていった。この一連の改革によって,より上位の管理・監督職へと登りつめていく従来型の「役職昇進型キャリア」に加えて,専門職として技能を深めていく「専門技能職型キャリア」が新たに誕生した。ここでは,50代で勤続30年以上の長期勤続者が大多数を占める16ケースの職場経歴を考察することによって,キャリアの複線化が彼らの職場経歴に及ぼした影響と個人の主体選択について検討している。「新しい職業能力と職業経歴」という視点からみて重要なことは,役職昇進型キャリアを拒否して,専門技能職型キャリアを主体的に選択するケースが複数,存在していることである。熟練職場において高度な専門技能を発揮する新しい働き方が誕生している。

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