- 著者
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榎戸 芙佐子
窪田 孝
中川 東夫
渡邉 健一郎
亀廣 摩弥
大原 聖子
地引 逸亀
野田 実希
- 出版者
- 一般社団法人 日本心身医学会
- 雑誌
- 心身医学 (ISSN:03850307)
- 巻号頁・発行日
- vol.46, no.10, pp.897-905, 2006
- 参考文献数
- 27
神経衰弱,慢性疲労症候群(CFS),うつ病の三者が疑われる3例の診断と治療・経過を紹介し,問題点を指摘し,今後の研究に対する提案を行った.症例1は疲労を主訴にインターネットの情報からCFSを疑って受診してきたがCFS疑診例であり,症状からICD-10の神経衰弱と診断し治療したが軽快に止まった.症例2もCFSを自己診断していたが,客観的所見に乏しく身体表現性障害と考えて治療していたとこう,妄想が明らかになり妄想性障害に診断を変更した.症例3は抑うつエピソード以前から身体徴候があり,リンパ節腫脹,関節痛,咽頭炎の症状からCFSと診断し,治療の結果ほぼ完治した.CFSと神経衰弱は社会的背景・症状が似ており,両者は文化的変異形と考えられる.れが国における神経衰弱の乱用ともいえる現状を考えると,CFSを積極的に診断し治療していくことが患者・家族の福利につながり,疲労の脳機能の解明にも貢献すると考えた.