著者
竹添 葉子
出版者
大東文化大学
雑誌
卒業研究梗概集. 書道学科
巻号頁・発行日
vol.15, pp.62-63, 2004-03-20

第1章においては、臨書2点の作品検証をもとに、伝西行筆のかなの魅力を考察した。伝西行筆のかなは、一文字書き終わったら、次の文字へ最短距離で連綿して、時には省略をきかせる。そのほとんどが平仮名を中心とした単純な字母によって書かれているものの、少しの貧弱さも感じさせない。中でも『中務集』はそれを鋭い筆致で文字を密集させることで、『一条摂政集』においては、1行中の線の強弱、疎密、墨色の変化を大胆につけることによって、自由なリズムで書き進めている。深く鋭い線質で書き進めることで生まれる流麗さ、力強さが "集団の美" を形成し、新しいかなの書の美を創造しているのではないだろうかと私は考える。第2章においては、古筆 (『中務集』) から集字した倣書作品の制作過程を、4節に分けて述べた。題材の『古今和歌集 巻第十八』は、『高野切第三種』のテキストとして知られている。ここでは、蓮阿『西行上人談抄』に触れ、『高野切第三種』から『中務集』への書風展開を試みた制作意図を中心に、古筆臨書から一歩踏み出した細字かな作品の制作法を取り上げた。第3章においては、西行の家集『山家集』から選歌した4首を題材にした半切作品の制作過程を、4節に分けて述べた。私は、日本の四季の情景こそ、日本人の美意識の原点であり、創造性をかきたてられるものではないかと考え、作品を通しての表現を試みた。また、試作段階の作品分析をもとに、紙面を立体的にみせるための技法について取り上げた。

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