- 著者
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兪 稔生
- 出版者
- 長崎ウエスレヤン大学
- 雑誌
- 長崎ウエスレヤン大学地域総合研究所研究紀要 (ISSN:13481150)
- 巻号頁・発行日
- vol.4, no.1, pp.35-44, 2006-03-31
アメリカにとって、中国との軍事的最前線が台湾海峡になるか、それとも台湾の東岸の沖合になるかでは相当大きな違いがある。また、中国、香港、台湾が一体となれば、強力な経済力を擁した超大国・中国がアジアに出現し、アメリカの覇権は確実に脅かされる。一方、日本は複雑な日中関係の歴史を背景に、「日本の上に立つ」中国が将来表れることに不快感(嫌中感情)をつのらせ、中国への警戒感が増幅している。したがって、日米両国は台湾の現状維持でも利害が一致しており、国家統一を目指す中国との緊迫した関係が続くことになる。日本では戦後、侵略戦争の責任者の多くが釈放され、政界に復帰したため、今なお中国をはじめとするアジア諸国に対する戦争責任を認めようとしない保守政治が続いている。歴史認識(教科書問題)、靖国神社参拝、台湾問題はその脈絡の中で当然起こるべきして起こった事件である。