- 著者
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荒西 太士
沖本 宜音
飯塚 祐輔
工藤 康介
平野 琢也
大久保 誠
- 出版者
- 宮崎大学
- 雑誌
- 宮崎大学農学部研究報告 (ISSN:05446066)
- 巻号頁・発行日
- vol.52, no.1, pp.21-27, 2006-03-23
カキ類(二枚貝綱翼形亜綱ウグイスガイ目イタボガキ科)は、極圏を除く世界中に分布する重要な二枚貝食糧資源である。100種以上と言われているカキ類の現生種のなかでも、Crassosrea属は、食用を目的とした養殖生産量が世界で最も多い水棲動物である。現在、食用目的で漁獲や養殖生産されているCrassosrea属9種のうち、7種は東アジアが原産であるのに対し、欧州と北米には各1種しか分布せず、Crassosrea属のユニークな地理的拡散と種分化の関係については不明な点が多い。本研究では、ミトコンドリアDNAのチトクロームc酸化還元酵素サブユニットI遺伝子を対象として、これらCrassosrea属9種の種分化を分子進化学的に検討した。当該遺伝子の塩基配列を多重整列して得られた遺伝距離および最小進化法(Minimum Evoluion Mehod)による分子系統樹の解析から、北米に分布しているC.virginicaと東アジアに分布しているCrassosrea属7種の異所的種分化が明らかとなった。さらに、中国最南部の雷州半島付近におけるC.hongkongensisとC.belcheriの側所的種分化も示唆された。本結果から、Crassisrea属の進化は、化石祖先種からは多地域起源説に従うが、東アジアにおける現生種の種分化は単一起源説に従うことが推察された。