著者
永田 雅輝 宮内 信文 田中 俊一郎 比嘉 照夫 萬田 正治 金澤 晋二郎
出版者
宮崎大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
1999

本研究の目的は,環境,一次産業,二次産業および医療分野でも普及しつつあるEM技術について,農業工学,土壌環境学,畜産学,園芸学および食品化学などの多方面の研究者が縦横に組織を組んで,客観的な調査を行い,今後の学術共同研究の方向性を創出することにある.調査の結果,これまでの事例から以下のように要約される.1)EMを構成する微生物は当初とは異なり,10種類程度でも土壌菌と共生的に効果を出すことが判明した.効果の発現は,環境中のEMの密度が高まって生態的に多勢となった場合に著効が認められ二次産業等における効果はEMが生成する多様な抗酸化物質によるものと判断される。2)水稲に対しては,EMと有機物の施用が適正であれば,数年で有機農業などへ転換可能であって,品質・収量ともに慣行法より向上し,また水田の除草時間も大幅に低減することを認めている.3)EM栽培したミニトマトの呼吸速度は対照区に比べて貯蔵初期で50%も低く,日持ちの良さを示唆している.4)EMの土壌改良材としての効果は顕著であることを認めている.5)畜産分野におけるEMは悪臭防除と病気予防に効果があることを認めている.6)EMの食品化学的有効性は,厳密な意味での確認できる例とデータは存在せず,その解明には多くの困難があり,時間が必要であると判断される.以上,EMの効果は現象的には,一部を除いて良好な事例もあることから,今後は (1)土壌菌と共生的に効果を出すメカニズム, (2)抗酸化物質の特定, (3)土壌改良の機作, (4)生態系改善の仕組み, (5)農産物の品質・貯蔵性向上の機構, (6)微生物群相遷移発達過程の実証, (7)EMの家畜腸内細菌に及ぼす影響, (8)食品化学的に厳密なEM効果の検証, など科学的・技術的な裏付けを行うことによって,環境保全型農業の推進に多大に寄与する研究分野であるといえる.
著者
伊佐敷 隆弘
出版者
宮崎大学
雑誌
宮崎大学教育文化学部紀要. 人文科学 (ISSN:13454005)
巻号頁・発行日
vol.27, pp.1-14, 2012-08-31

現代の分析形而上学を代表する哲学者の一人であるジョナサン・ロウの4カテゴリー存在論の概略を明らかにする。ロウにとってカテゴリー論は哲学の中心に位置する(第1節)。「個体/普遍」と「実体的/非実体的」という2つの区別を交差させることによって, 対象(実体的個体)・モード(非実体的個体)・種(実体的普遍)・属性(非実体的普遍) の4つの根本的カテゴリーが生み出される。これら4カテゴリーの間には「個体は普遍を実例化し, 非実体は実体を特徴づける」という存在論的関係が成り立っている。また, 普遍は個体なしで存在することはできない(第2節)。ロウによると, 根本的カテゴリーの種類が少ない節約的な他のカテゴリー論よりも, 4カテゴリー存在論は説明力の点で優れている。すなわち, 4カテゴリー存在論は「性質の知覚」「トロープの個別化」「自然法則の分析」「傾向性の分析」などの問題を他の理論よりも適切に解決する。個体だけが因果関係に入りうるので, 知覚はモードを必要とする。モード(トロープ) は対象のあり方であって, その存在と同一性は対象に依存する。自然法則とは, 「種が属性によって特徴づけられる」ということである。傾向性とは, 「対象が, 或る属性によって特徴づけられる種の実例である」ということであり, 他方, 生起状態とは, 「対象が, 或る属性の実例であるモードによって, 特徴づけられる」ということである(第3節)。
著者
丸山 治彦 菊地 泰生 倉持 利明
出版者
宮崎大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2014-04-01

マンソン孤虫による通常の孤虫症と違い、芽殖孤虫は人体内で無性的に増殖し、感染は致死的に経過する。芽殖孤虫の無性増殖の謎を解明するため、マンソン孤虫と芽殖孤虫のゲノムを決定し両者を比較した。芽殖孤虫のゲノムサイズは653 Mb、マンソン孤虫は796 Mbで、芽殖孤虫のゲノムでは16の遺伝子ファミリーが増大し、26の遺伝子ファミリーが縮小していた。増大していた遺伝子ファミリーは既知の遺伝子と相似性が低かったが、増大したファミリーの遺伝子には臓器分化、シグナル伝達、アポトーシスに関連するものがあった。これは、宿主内という定常環境に生息し臓器を持たないプレロセルコイドの活動を反映したものと考えられた。
著者
加藤 貴彦 今井 博久 今井 博久 濱砂 良一 中尾 裕之 篠原 久枝 加藤 貴彦
出版者
宮崎大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2003

研究目的は、ある1つの県内の男女学生における無症候の性器クラミジア感染症の有病率と危険因子を明らかにすること、効果的な予防方法とスクリーニング法を検討することである。早朝初尿を検体として用い、近年開発され感度と特異度に優れたPCR方法により陽性率を検討した。第1段階として3176名(女性:1869名、男性:1307名)の対象者を得た調査を実施。大学および専修職業学校に在籍する無症候の性行為経験を有する18歳以上の男女学生における性器クラミジアの有病率は8.7%(女性:9.9%、男性:6.9%)であった。その後、対象者を増やして最終的に、無症候の男女学生10111名から尿サンプルと無記名自記式の性行動に関する質問票の回答を得た。有病率は、女子学生が9.6%、男子学生が6.7%であった。危険因子は、女子学生と男子学生で共通してあったのは、「これまでの性的パートナー数が4名以上」、「必ずしもコンドームを使用しない」、「過去6ヵ月間に2名以上の性的パートナーがいた」であった。女子学生だけの危険因子は「年齢」、男子学生だけのそれは「喫煙」になった。危険因子を用いたスクリーニングが効果的であることが示唆された。本研究班は、18歳以上の学生を対象にクラミジア感染の実態に関する研究を実施してきた。無症候の感染が概ね1割程度あることが明らかになったが、調査研究を進めて行く過程で18歳未満の若年者にも感染が拡大していることが示唆された。そこで、対象の拡大(年齢の引き下げ)を行い、ある県の男女高校生を対象に無症候のクラミジア感染の感染率を明らかにするための試験的な研究(パイロット研究)を実施した。男子高校生が7.3%、女子高校生が13.9%であった。これまでの全部の結果から考えると、わが国のクラミジア感染はかなり蔓延した状態であることが明らかになり、早急に蔓延防止の対策を立てる必要性が示唆された。
著者
竹井 成美
出版者
宮崎大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2005

1641年.オランダ人は出島に移され1868年の明治政府誕生までのほぼ200年間を過ごす。その間,キリスト教伝来以来西洋の音楽が日本にある程度根付き花開くまでになっていたのが、表舞台から姿を消す。しかし、『オランダ商館日記』には、1820年に長崎奉行の交代式でオペレッタが上演されたという記述や、出島の医官シーボルトが在日中にピアノ作品を書いたり、そのピアノ自体を山口・萩の豪商熊谷五右衛門に贈っで帰国したという資料がある。本研究では、主として平成17年度には(1)オペレッタの内容、平成18年度には(2)いわゆるシーボルトのピアノの実態調査とその作品について研究した。その結果、オペレッタは「短気な男」と「二人の漁師とミルク売り娘」が上演されたこと、その上演については、シーボルトのお抱え絵師の川原慶賀が七枚の絵に表して残しており、当時の様子を物語る貴重な資料となっている。一方、シーボルトのピアノは、1955年に郷土史家の田中助一によって発見され、その後広島の楽器店が修理したり、2000年の日蘭交流400年を記念したコンサートで音が再度よみがえる機会があったものの、全面的な修復までには至らなかった。しかし、1965年に財団法人熊谷美術館が発足し「シーボルトのピアノ」として展示されてから今日まで、同館の貴重な一品として所蔵されている。このように、本研究によって、200余年間におよぷ小さな出島の中で、西洋音楽がどのように鳴り響き受け継がれてきたかを少なくとも検証することができた。
著者
岩槻 幸雄
出版者
宮崎大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2004

この3年間で次の点が明らかとなった。全海洋域におけるタチウオ科タチウオ属魚類は,Trichiurus lepturusは、水産学上重要な魚種で、分類学的には多くの異論があったが、FAOのReviewにより全世界にNakamura and Parin(1993)によって1種とされた。その後も多くの異論がだされ、学名が混乱しているため国際間の漁業交渉では紛争の種となっている。申請者は、従来全く認知されていなかった小型類似種群タチウオ属魚類(全長700mm以下)の2新種を含む4種をまず幸晧し、従来知られる大型類似種群(全長1500mm上)には、形態学的に区別される10種を確認し、全海洋域におけるタチウオ科タチウオ属魚類の全種数と、その識別法および、正しい学名の検討を明らかにすることを務めた。初年度は,テンジクダチTrichiurus lepturusと同定されてきた標本を全世界の海域から生標本および固定標本を得るように全力を注ぎ、最も困難である西アフリカ、西部大西洋の生標本を手に入れることができたことにより、遺伝学的分析を行い、形態学的な違いと遺伝学的違いとが一致し、インド・西太平洋の種類と比較して、4種が遺伝学的にも強く別種である結果が得られた。その4種は以下の通りである。1,Trichiurus lepturus(western Atlantic type), 2,Trichiurus sp.2(yellow eye and yellow margin of dorsal fine membrane from Indo-Pacific), 3,Trichiurus japonicus(East Asian shelf type with long caudal fin), 4,Trichiurus sp.3(western African type with short pectoral fin)。
著者
蔦島 譲治 高宮 考悟 内田 琢
出版者
宮崎大学
雑誌
挑戦的研究(萌芽)
巻号頁・発行日
2019-06-28

「児童虐待」は重大な社会問題となっている。この研究では、親の「恐怖記憶」が子供に遺伝し、子供の行動に影響を与えるかを検証する。本研究による成果は、「虐待を受けた親」と「児童虐待」との関連を動物行動実験により、「恐怖記憶の遺伝」という生物学的根拠とそのメカニズム解明により、虐待の連鎖を阻止することにある。申請者の予備実験では、音と電気刺激による恐怖条件付けした親マウスを交配させ、誕生した仔マウスに音を聞かせると恐怖反応(freezing)を示した。すなわち、親の「恐怖記憶」が仔に遺伝したことを示唆する結果を得た。さらに用いたマウスを使用し、「恐怖記憶の遺伝」を分子レベルで解析したい。
著者
江藤 望 篠原 久枝 河原 聡 菅沼 ひろ子
出版者
宮崎大学
雑誌
挑戦的萌芽研究
巻号頁・発行日
2009

有用な母乳哺育を阻害する要因の一つとして乳腺炎が挙げられる。このうち、乳のうっ滞に起因する乳腺炎は、スクロースを摂食することで炎症が重篤化する事を見いだした。これは、我々の知りうる限り食品成分が乳腺炎発症あるいは重篤化と関連ある事を実験的に確認した最初の例である。
著者
堀井 洋一郎 野中 成晃
出版者
宮崎大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2009

西日本各地でイノシシ猟犬の血液中抗体検査と、糞便内虫卵検査を行ない、肺吸虫感染状況を調査した。国内の犬に感染する肺吸虫は、ウェステルマン肺吸虫、宮崎肺吸虫および大平肺吸虫の3種であり、前2者は人へも感染する人獣共通寄生虫である。中国、四国および近畿の各県で131人のオーナーにより飼育されていた441頭のイノシシ猟犬の抗体検査の結果、195頭(44. 2%)が陽性であり、肺吸虫に感染していることが示唆された。
著者
三浦 知之 三浦 要 富岡 宏 佐伯 めぐみ 三橋 利恵
出版者
宮崎大学
雑誌
宮崎大学農学部研究報告 (ISSN:05446066)
巻号頁・発行日
vol.58, pp.51-68, 2012-02-24

宮崎県門川湾の庵川東西入り江(32°29'N,131°41'E)は,干潟域14haおよび藻場域がおよそ7haであり,アマモ,コアマモおよびノトウミヒルモの群落が見られる。両入り江から57科120種の貝類と46科86種の甲殻類および腕足類1種が確認された。庵川東入り江から98種の貝類と69種の甲殻類が,庵川西入り江から55種の貝類と54種の甲殻類が記録され,貝類33種と甲殻類37種は両入り江に共通であった。さらに腕足類のカサシャミセン類の1種は庵川東入り江の転石下に生息し,宮崎県では他の海岸でも見つかり,今後も生息地の確認は増える可能性がある。庵川東入り江は東側を縁取る岩礁域がほぼ自然のまま残されており,庵川西入り江に比べて,干潟面積が2.8倍,海草群落の面積が1.6倍広いため,出現種が多くなったものと思われる。
著者
山田 美幸 鶴田 来美 長谷川 珠代
出版者
宮崎大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2006

本研究では独居高齢者に焦点あて、独居による生活の不具合や不安要因を明らかにし、個人の生活に即した介護予防プログラムを開発することを目的とした。平成18年度は、介護予防に関する注意事項や体操を含めた介護予防を目的としたプログラムを作成し、地域の施設等で、のべ179名に実施した。その結果、関節の拘縮や身体機能の低下が見られる参加者があり、これらを予防するために、継続してできるプログラムが必要であることが明らかになった。平成19年度は改良したプログラムをのべ20回実践し、評価を行った。対象者はデイサービスに通所する34名、平均年齢は84.7±4.2歳であった。「布団からの起き上がり」や「いすからの立ち上がり」に対する困難感を抱く傾向があったが、プログラム後はその困難感が減少していた。また、転倒のリスクは「家の中」が多かったが、プログラム後では有意に減少していた。歩行状態は一定距離の歩数が減少し、足の踏み出しが大きくなっていた。続けて、独居高齢者の生活行動パターンと運動量を明らかにするために、3名の自宅に人感センサーを設置した。これによって1日の生活パターンやトイレの回数、室内での部屋移動の状況が把握できた。さらに1ヶ月の情報を得た後、1日あたりの身体活動量を算出し、自宅でできる介護予防プログラムを提供した。また、これを家族が毎日観察し、活動状況によっては家族が高齢者に連絡をするといったコミュニケーションをとる機会にもなっていた。これらの結果より、高齢者は身体機能の低下によっておこる下肢の筋力を使う日常生活行動について不具合や不安を抱く可能性がある。しかし、高齢者の動きを生活活動量として捉え、個別性のあるその人に合った介護予防プログラムを提供することによって、不安や転倒のリスクの減少につながり、効果的であると考える。
著者
園田 立信 永延 清和 長谷川 信美 御手洗 正文
出版者
宮崎大学
雑誌
萌芽的研究
巻号頁・発行日
2000

「家畜は夜作られる」という諺が昔は語られていた。これは、十分な急速によって、エネルギーのロスを少なくすれば、それだけ、家畜の健康を保証し、成長や生産を促進できるという科学的な常識であった。本研究グループは、上記の考えは理論的には間違っていないと考えるが、昨今の近代的、すなわち集約的な使用管理下の家畜での行動などの実態をみていると、現状では全く異なっているのではないかと発想し、下記のような調査を行った。本研究では、草地での放牧、コンクリート床のペン、ケージ(鉄枠)の3種の飼育管理条件を設定し、それらの生理的・行動的状態を、心電図、脳波、および暗視ビデオカメラを用いて調査した。なお、5分毎に睡眠の程度を、身体の動き、心電図、および脳波で評価し、5点満点で評価した。なお、豚の睡眠時脳波については、ヒト脳波の分類に近似させることを試みたが、出現波形の違いと出現頻度の特徴から6種類に分類し、他の生理的指標をあわせた。その結果、豚のおかれた飼育環境によって、睡眠の状態は著しく異なることが明らかとなった。すなわち、ケージ飼育では、見た目では"睡眠"下にあるが、脳波はα波がもっとも多く、深い睡眠を示す脳波は殆ど出現しなかった。この場合、心拍数は少なくなることはなく、多いままであった。従って、拘束下の豚は、行動面では横臥・伏臥しているが、エネルギー消耗の多い状態であることが明らかとなった。逆に、放牧された豚の脳波と心拍数を観察すると、横臥時の脳波は周期的に深いものとなり、心拍数も明らかに少ないことが観察された。従って、この豚ではエネルギー消耗の少ない休息を行っていることが明白であった。コンクリート床のペンで飼育した豚の休息時の生理的指標は、上記のケージ拘束と放牧との中間にあった。以上より、通常の集約的養豚システムでの豚では休息時もエネルギー消耗が多く、「寝る子は育つ」という諺はあてはまらないことが確認された。
著者
竹井 成美
出版者
宮崎大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2003

1605年に長崎のコレジョ(大神学校)で印刷されたラテン語(一部ポルトガル語とアルファベットによる日本語)による『サカラメンタ提要』という典礼書の中には、その後半部分の「葬儀のための典礼」の箇所に、点々と祈りの歌であるグレゴリオ聖歌が19曲収録されている。それらは、五本の譜線が朱色で、また当時ヨーロッパで用いられていた特殊な四角い形をした、いわゆるネウマ譜(音符)は黒色で印刷されており、いわば二重式の楽譜印刷で刷られている。まさに日本初の楽譜印刷によるものである。本研究は、以下の2つを明らかにすると同時に、グレゴリオ聖歌のいくつかをレクチャーコンサートや講演の中で一般の人々に紹介することができた。(1)今日、東洋文庫と上智大学キリシタン文庫に存在するそれぞれの『サカラメンタ提要』の原本を比較すると、例えば1曲目の「Subvenite sancti Dei」は数カ所の植字ミスと思われる箇所が判明した。また当時のゴツゴツしたネウマ譜の一つひとつの印刷工程をチェックしながら、19曲すべてを今日の五線譜に解読することができた。(2)19曲中の1つ「Tantum ergo」は、当時のポルトガルとスペインでしか歌われていなかった、いわばローカル聖歌であることを、当時のスペインの作曲家たちの作品の中から証明することができた。(3)当時の日本で歌われた可能性のあるグレゴリオ聖歌を、折に触れてレクチャーコンサートや16世紀の東西交流史をテーマとした講演の中で実際に演奏したり、CDで紹介することができた。折しも、今年は『サカラメンタ提要』の印刷から400年に当たり、なんらかの形で19曲全曲を演奏する企画をしたいと考えている。
著者
篠原 久枝 藤井 良宜 武方 壮一
出版者
宮崎大学
雑誌
萌芽研究
巻号頁・発行日
2003

(1)アンケート調査の実施小学校、中学校における身体性の統一した名称を探るために、2004年度は幼稚園から中学校の保護者(関東、中国、九州地区)、小学生(関東、中国,九州地区)、中学生(九州地区)、高校生(関東、九州地区)、大学生(関東、近畿、中国、四国、九州地区)を対象にアンケート調査を実施した。調査に先立ち、2003年度の小学校教科書検定により今までの小学校保健の教科書で多く採用されていた「ペニス」「ワギナ」が文部科学省の学術用語集に準拠していないとの理由で、「陰茎」「膣」になったとの情報を得た。発達段階に相応しい名称として、男性名称は保護者回答では就学前〜小学校中学年で「おちんちん」、小学校高学年以上で「ペニス」が多くなっていたが、中学生回答では、小学生では「おちんちん」、中学生では「ペニス」が多くなっていた。女性名称については、保護者回答では就学前、小学校低学年で「おまんまん」「おまた」が多く、小学校中学年以上では「ワギナ」「膣」が多くなっていた。中学生回答では小学生、中学生ともに「大切なところ」「性器」が多くなっていた。自由記述として「名称1つで恥ずかしさを持つか、大切に思うか変わるので、自分の身体に責任をもてきちんと向き合える外性器やプライベートゾーンが良い」などの意見が見られた。(2)第2回アジア性教育学術交流会参加(2004年8月20日〜25日、台湾高雄市)日本、台湾、中国、香港、マレーシア、アメリカ、オーストラリアから約300名の参加があり、性教育の実践プログラムのみならず、「性と医療」「日本におけるDV加害者プログラム」などの幅広い知見を得ることが出来た。特に台湾の発表では、「政府による2つの性教育実践モデル」(エネルギー分布モデルと濾過器モデル)、「SAR(Sexual Attitude Restructuring)の応用」、「全年齢における全方位科学的性教育の概念」などの新しい試みが紹介された。