- 著者
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西中川 駿
大塚 閏一
林田 重幸
- 出版者
- 鹿児島大学
- 雑誌
- 鹿兒島大學農學部學術報告 (ISSN:04530845)
- 巻号頁・発行日
- vol.16, pp.91-98, 1966-03-14
家畜の乳房血管系の研究として, さきに山羊28例の乳房血管分布について報告したが, 今回は乳牛(Holstein)14例の乳房血管分布を肉眼的に精査し, その走行および分岐状態を明らかにした.1.乳房に分布する動脈はA.pudenda ext.とA.perinealisがある.しかしこのA.perinealisの乳房実質への分布はほとんどみられなく, 乳房後部および乳鏡の皮膚に分布し, 乳房上リンパ節枝からの分枝と吻合する.A.pudenda ext.は一般に, A.subcutanea abdominisを分岐して, A.mammariaになると記されているが, 検索した乳房全例ともこのA.subcutanea abdominisはA.mammaria cranialisの移行枝としてみられた.2.A.mammariaは後乳区の乳房基底部で乳房実質に入り, 直ちにA.mammaria cranialisとA.mammaria caudalisとに分かれる.A.mammaria cranialisは後乳区の実質と後乳頭に達する枝を分け, さらに前乳区実質および前乳頭に分布する内側乳腺動脈を分けて, A.subcutanea abdominisに移行する.A.mammaria caudalisは乳房上リンパ節へ枝を分け, 後乳区実質に広く分布して, 後乳頭に達する.前後の乳区間の動脈吻合枝として, A.mammaria cranialisからの後乳頭枝がみられ, 左右乳区間には内側乳腺動脈からの分枝と乳房上リンパ節枝からの分枝がみられた.3.A.mammariaからの枝の分かれ方に4つのTypeがあり, そのTypeと出現頻度についてはFig.5に示した.4.静脈はおおよそ動脈に随伴して走り, 外径は同名の動脈の約2〜3倍の大きさで, 乳房基底面および腹面では左右の静脈が連絡し, いわゆる静脈輪を形成している.5.従来, 血液の流出する径路にはV.pudenda ext., V.subcutanea abdominisおよびV.perinealisの3つの径路があると記されている.しかし, 静脈弁の位置と構造からして, V.perinealisは乳房から血液の流れ去る径路とはならず, むしろ乳鏡付近でこの静脈に入つた血液は乳房に向い, 会陰静脈吻合枝, V.mammaria caudalisを通り, V.pudenda ext.へ流れると考えられ, また乳房を環流した血液はV.subcutanea abdominisよりもV.pudenda ext.へ流れ去るものが多いと考えられる.