著者
西田 孝太郎 小林 昭 永浜 伴紀
出版者
鹿児島大学
雑誌
鹿兒島大學農學部學術報告 (ISSN:04530845)
巻号頁・発行日
vol.4, pp.151-168, 1955-11-30

I-1.日本産ソテツCycas revoluta THUNB.の種子より, 著者がさきに予想した有毒配糖体を純粋に単離した.このものはC_8H_<16>O_7N_2なる無色針状結晶の一新配糖体であることを証明して, cycasinと命名した.cycasinの単離にはその結晶化を妨げる共存不純物, 殊に糖類を, イオン交換樹脂及び活性炭chromatographyによつて分別除去する方法を採つた.I-2.cycasinの単離に際し, cycasinとの分離困難なsucroseを除くため, 抽出液に酵母invertaseを作用せしめ, 活性炭chromatographyを効果的に且つ容易に行い, その収量を原法に比して倍加せしめることができた.II.cycasinの構造を決定するため濠洲産ソテツのmacrozaminについての報告と比較検討した結果, 酸, アルカリ乃至は還元剤によるcycasinのaglyconeの分解生産物及び, cycasinの紫外部及び赤外部吸収スペクトルにおける吸収極大が, macrozaminのそれらと一致することを明らかにした.しかるにcycasinの糖成分として証明しうるのはglucose 1分子のみで, xyloseは存在しない.すなわちcycasinの構造はglucosyloxyazoxymethaneでなければならないと結論される.III.ソテツ種子から調製したemulsinによるcycasinの分解を, 酵素反応の条件を種々異にする場合について検討した.最終分解産物としてcycasin 1 mol.につき, N_2 gas, formaldehyde, methanol及びglucoseがそれぞれ約1 mol.ずつ得られ, 酸による加水分解の結果と一致した.N_2 gasの測定にはWARBURG manometerを用いた.cycasinのaglyconeは酵素によつてglucoseから切離される場合にも不安定で, 上記低分子化合物に分解するものと結論される.

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