著者
田幸 年邦 永浜 伴紀 野村 男次
出版者
Japan Society for Bioscience, Biotechnology, and Agrochemistry
雑誌
日本農芸化学会誌 (ISSN:00021407)
巻号頁・発行日
vol.51, no.8, pp.513-518, 1977
被引用文献数
6 20

キサンタンガムの非ニュートン流動性および動的粘弾性について吟味を加えた.<br> キサンタンガムは,塑性流動を示し,配向性が著しく,アンドレード式に適合せずシグモイド曲線を示したことから,会合性多糖と結論された.<br> キサンタンガムの流動指数,構造粘性は濃度に関係なくほぼ一定値を示した.<br> キサンタンガムはη'に比較してG'が著しく大きく,tanδは0.4~0.5で,弾性に富む多糖であることがわかった.<br> キサンタンガムの水溶液に塩添加すれば,粘性の温度依存性がアンドレード式に適合するようになることを認めた.このことから,キサンタンガムの分子鎖間会合は塩添加により,ほぐれると結論できる.<br> このことから,キサンタンガムの分子鎖間会合には側鎖が著しく関与していることが示唆された.
著者
藤本 滋生 中島 修一 久保 豊 菅沼 俊彦 永浜 伴紀
出版者
日本応用糖質科学会
雑誌
澱粉科学 (ISSN:00215406)
巻号頁・発行日
vol.28, no.3, pp.174-179, 1981
被引用文献数
3

1.前報に引き続き,本邦南部の自生植物の澱粉4種について調べた.すなわち,澱粉源はカラムシ(イラクサ科)の塊茎,オシロイバナ(オシロイバナ科)の種子,テッポウユリ(ユリ科)の鱗茎,サルトリイパラ(ユリ科)の根茎で,これらの生組織から,それぞれ7%,32%,11%,6%の収率で澱粉を得た. 2.各澱粉につき,一般分析のほか,顕微鏡観察,粒径分布,X線回折,ヨウ素呈色,生澱粉のグルコアミラーゼ消化性,膨潤力,溶解度,アミログラフィー等の項目につき測定し,それぞれの特性を考察した. 3.カラムシ澱粉は単粒,複粒,半複粒などが混在し,アミロスと全リン酸の含量が比較的高い.さらにアミログラムその他から,硬い澱粉粒であると思われる.=オシロイバナ澱粉は1μm程度の微粒で,胚乳がそのまま澱粉の塊りといえる点が興味深い.また6%濃度のアミログラムではほとんど粘度を示さなかった.テッポウユリの澱粉はジャガイモ澱粉に似た大形の澱粉であるが,その糊の粘度は高温下でも安定であった.サルトリイバラ澱粉は白度が低く,ユリ類澱粉とはまったく異なっており,むしろサツマイモ澱粉に似た点が多かった.しかし,アミログラムの粘度ははるかに低かった. 本報告の一部は,昭和46年度および55年度の日本澱粉学会大会,ならびに昭和55年度の日本農芸化学会西日本支部大会で発表した.なお,本研究には,鹿児島大学名誉教授蟹江松雄博士のご鞭撻と,本学学生の杉村和道,佐々木弘美,加野義彦,久保田力の諸君の協力をいただいた.付記して謝意を表する.
著者
藤本 滋生 黒木 千絵 長倉 暁美 菅沼 俊彦 永浜 伴紀
出版者
The Japanese Society of Applied Glycoscience
雑誌
澱粉科学 (ISSN:00215406)
巻号頁・発行日
vol.33, no.1, pp.34-39, 1986-03-31 (Released:2010-03-16)
参考文献数
37
被引用文献数
1 1

1. わが国において, いわゆる雑草として最も多くみられるイネ科の草本植物であるチカラシバ, エノコログサ, タイヌビエの3種の種子からそれぞれ澱粉を単離精製した. 収率は頴を含む種子重量に対し, 約16%, 15%, 20%であった.2. 各澱粉につき, 水分, 蛋白質およびリンの分析, 顕微鏡観察, 粒径分布, X線回折, ヨウ素呈色, 生澱粉のグルコアミラーゼによる消化, 膨潤力, 溶解度, アミログラフィーなどの諸項目につき測定し, それぞれの澱粉の特性を考察した.3. 3種の澱粉とも粒は比較的小形で, トウモロコシ澱粉に似た形であった. またほとんどの項目において, おおむねトウモロコシ澱粉に近い性質を示した. ただチカラシバ澱粉の膨潤力がサツマイモ澱粉より大きいこと, およびエノコログサとタイヌビエの澱粉のリン含量がそれぞれ0.127%, 0.114%と高いことなどの特徴がみられた.
著者
西田 孝太郎 小林 昭 永浜 伴紀
出版者
鹿児島大学
雑誌
鹿兒島大學農學部學術報告 (ISSN:04530845)
巻号頁・発行日
vol.4, pp.151-168, 1955-11-30

I-1.日本産ソテツCycas revoluta THUNB.の種子より, 著者がさきに予想した有毒配糖体を純粋に単離した.このものはC_8H_<16>O_7N_2なる無色針状結晶の一新配糖体であることを証明して, cycasinと命名した.cycasinの単離にはその結晶化を妨げる共存不純物, 殊に糖類を, イオン交換樹脂及び活性炭chromatographyによつて分別除去する方法を採つた.I-2.cycasinの単離に際し, cycasinとの分離困難なsucroseを除くため, 抽出液に酵母invertaseを作用せしめ, 活性炭chromatographyを効果的に且つ容易に行い, その収量を原法に比して倍加せしめることができた.II.cycasinの構造を決定するため濠洲産ソテツのmacrozaminについての報告と比較検討した結果, 酸, アルカリ乃至は還元剤によるcycasinのaglyconeの分解生産物及び, cycasinの紫外部及び赤外部吸収スペクトルにおける吸収極大が, macrozaminのそれらと一致することを明らかにした.しかるにcycasinの糖成分として証明しうるのはglucose 1分子のみで, xyloseは存在しない.すなわちcycasinの構造はglucosyloxyazoxymethaneでなければならないと結論される.III.ソテツ種子から調製したemulsinによるcycasinの分解を, 酵素反応の条件を種々異にする場合について検討した.最終分解産物としてcycasin 1 mol.につき, N_2 gas, formaldehyde, methanol及びglucoseがそれぞれ約1 mol.ずつ得られ, 酸による加水分解の結果と一致した.N_2 gasの測定にはWARBURG manometerを用いた.cycasinのaglyconeは酵素によつてglucoseから切離される場合にも不安定で, 上記低分子化合物に分解するものと結論される.
著者
藤本 滋生 杉村 和道 中島 修一 菅沼 俊彦 永浜 伴紀
出版者
The Japanese Society of Applied Glycoscience
雑誌
澱粉科学 (ISSN:00215406)
巻号頁・発行日
vol.28, no.3, pp.166-173, 1981-06-30 (Released:2011-02-23)
参考文献数
29
被引用文献数
5 6

1.ウリ科のカラスウリ(塊根)とキカラスウリ(塊根),およびサトイモ科のムサシアブミ(塊茎)とクワズイモ(根茎)よりそれぞれ生組織に対し12%,1 .3%,5%,4%の澱粉を得た. 2.サツマイモ澱粉を対照とし,それぞれの澱粉につき,一般分析のほか,顕微鏡観察,粒径分布,X線回折ヨウ素呈色,生澱粉のグルコアミラーゼ消化,膨潤力,溶解度,アミログラフィー等の項目について測定し,その特性を考察した. 3.カラスウリ澱粉は小形で全リン酸含量がきわめて高く,膨潤力やアミログラム粘度も高いことなどから,強固な粒構造をもっていることが示唆された.キカラスウリ澱粉はきわめて精製が容易で,性質はジャガイモ澱粉に比較的似たものであった.ムサシアブミ澱粉は多くの点でサツマイモ澱粉に酷似していることがわかった.またクワズイモ澱粉は,粒径1~2μmの微小粒のため遠心分離が必要であり,さらに混在するシュウ酸カルシウムの針状結晶を溶解するために希塩酸を用いた.その性質は,アミロース含量がきわめて少なく,糊化しやすく,膨潤力が大きかった., 本報告の一部は,昭和46年度および55年度の日本澱粉学会大会ならびに昭和55年度の日本農芸化学会西日本支部大会で発表した.なお,本研究には,鹿児島大学名誉教授蟹江松雄博士のご鞭撻と,本学学生の佐々木弘美,久保豊,久保田力の諸君の協力をいただいた.付記し謝意を表する.