- 著者
-
田中 亮太
- 出版者
- 順天堂大学
- 雑誌
- 順天堂医学 (ISSN:00226769)
- 巻号頁・発行日
- vol.52, no.1, pp.2-10, 2006-03-31
成体の中枢神経組織には,ニューロン,グリアを新たに生み出す能力を持った神経幹細胞neural stem cells (NSCs)の存在が近年の研究で明らかにされている.この神経幹細胞を利用した中枢神経系の再生医療が注目され,脳梗塞,頭部外傷,脊髄損傷など克服困難とされてきた中枢神経系疾患への新たな治療法として期待が寄せられている.今回われわれは,内在性神経幹細胞を利用した脳梗塞の治療の可能性について,ラットの局所脳梗塞モデルを用い検討した.脳梗塞後4日目より,神経幹細胞増殖因子であるプロラクチン(PRL),神経細胞分化誘導因子であるエリスロポイエチン(EPO)をそれぞれ1週間ずつ脳室内に注入し,最長45日まで観察・検討を行った.運動機能テストではPRL+EPO群ではコントロール群に比し脳梗塞6週間後において優位な機能回復を認めた.一方治療群の脳組織ではBrdU/NeuN陽性の新生したニューロンが損傷部位とその周辺に優位に多数認められ,これら再生したニューロンが脳梗塞後の機能回復に関与していると考えられた.今後成人脳においても移植療法と同様に,内在性神経幹細胞を用いた機能回復を目的とした新しい治療法の確立が期待される.以下の事由により本文を削除。2007(平成19)年11月29日1.海外の共同研究者から,未発表の図表を含む論文を共同研究者の承諾なしに単著として発表した,という指摘が今年(2007年)10月になって正式文書として来信。2.著者もこれを認め了解したので,遡って掲載を取り消し。3.本件については順天堂医学53(4)紙上にて公告。