著者
折田 創 Kuhajda Frank Gabrielson Edward
出版者
順天堂大学
雑誌
順天堂医学 (ISSN:00226769)
巻号頁・発行日
vol.54, no.1, pp.10-15, 2008-03

脂肪酸合成酵素Fatty Acid Synthase(FAS)は,食道癌,胃癌,大腸癌といった消化器病や乳癌,肺癌などの多くの癌に高発現している.現在までにわれわれは,C75という脂肪酸合成酵素阻害剤を用いたとき,この酵素(FAS)の活性低下が癌細胞をアポトーシスに誘導し腫瘍縮小効果を認めることから,新しい抗癌剤としての可能性を報告してきた.残念ながら,このC75はFAS酵素活性の低下と同時に,CPT-1(Camitine O-Palmitoyltransferase-1)を刺激することによる,容量依存性の食欲低下,体重減少を引き起こす.われわれのグループでは,このC75の副作用を抑え,つまりCPT-1を刺激することなく,脂肪酸合成阻害を行う第二世代薬の研究を行ってきた.百数十の候補の中でC93が,C75と同等,もしくはそれ以上強力に,脂肪酸合成を阻害し抗腫瘍効果を認めた.また薬物動態試験で,C93はC75と同様,半減期が約12時間であり,癌細胞内の脂肪酸レベルを低く保つ為には一日2回投与が必要であることが判明した.マウスに実際投与したところ,C75では週1回の投与で体重減少を起こし長期治療が困難であったがC93では副作用を認めず連日投与が可能であった.今回,肺癌細胞を2種類の方法でマウスに移植したモデルを用いて,C93での治療を行った.この結果,治療群が非治療群と比較し有意差をもって腫瘍増殖抑制効果を認めた.特別な副作用も認められなかった.また,この薬を用いて,ニコチンによる肺癌モデルのマウスに投与したところ,肺癌の発生を抑えることが可能となり,脂肪酸レベルを低く保つことにより癌発生をも抑制できることが判明した.今後,がん治療,がん予防の分野において脂肪酸合成の抑制が重要な因子となりうると考える.
著者
安藤 美樹
出版者
順天堂大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2016-04-01 (Released:2016-04-21)

iPS細胞から誘導した抗原特異的細胞障害性T細胞(CTL)はもとの末梢血由来抗原特異的CTLと比較し、強い増殖力、テロメア長の伸展など機能的な若返りが特徴である。我々はマウスモデルを用い実際の抗腫瘍効果も検討したところ、強力な抗腫瘍効果と、もとの末梢血由来CTLで治療したマウス群より有意な生存期間の延長を確認できた。更に安全性を高めるため自殺遺伝子iCaspase9による細胞死誘導システムを導入し、副作用を薬剤で制御できることを確認した。有効性と安全性を確認できたので、臨床研究を目指し現在前臨床試験を行なっている。本研究では節外性NK/Tリンパ腫鼻型、ホジキン病などの複数のEBウイルス関連リンパ腫の患者末梢血からLMP1/2, EBNA, BZLF1抗原などの様々な抗原特異的CTLクローンを誘導後、T-iPS細胞を樹立、その後iPS細胞由来EBウイルス抗原特異的CTLを誘導しEBウイルス関連リンパ腫に対する抗腫瘍効果を検討している。現在10名のEBウイルス関連リンパ腫患者末梢血より、複数のEBウイルス抗原に対するCTL誘導に成功している。その後T-iPS細胞を樹立してiPS細胞由来CTLを誘導しており、EBウイルス感染細胞に対する抗原特異性や殺細胞効果を検証中である。T細胞機能評価後は、安全システムとして自殺遺伝子iCaspase9を、樹立したT-iPS細胞に導入し同様に安全性と有効性を検証する予定である。免疫チェックポイント阻害剤との併用効果の有無についても検討を行なっている。
著者
土居 久子 北島 靖子 大野 ゆう子 西村 あをい 大槻 優子
出版者
順天堂大学
雑誌
順天堂医療短期大学紀要 (ISSN:09156933)
巻号頁・発行日
vol.1, pp.31-38, 1990-03-25
被引用文献数
1

****18〜21才の84名の本学学生(女子)を対象に,女性性機能,女性の役割を認識させる一歩として,月経に関する実態調査を行った.調査内容を初経の状況,月経の状態,月経に伴う心身の変化と行動,月経のとらえ方の視点から検討した.その結果,初経教育は10〜12才に学校で受けた学生が多いが,初経を告げた相手は母親が多かった.月経に伴う心身の変化は月経前より月経中に腰痛,腹痛,憂うつなどが多かった.月経中の行動では控える行動は多いが積極的にとる行動は少なく,月経痛への対応も消極的対応が多かった.月経に関する記録は約半数の学生が取っていたが,月経の日のみの記録が多かった.月経のとらえ方はプラスイメージが多かった.初経時のお祝い,月経の持続日数,月経のとらえ方それぞれと現在の月経の不快症状との間に関連はみられなかった.以上のことから,今後,学生個々の状況を検討しながら,月経時の対応として体操,服薬,記録などについて指導する必要がある.また,それらを通じて女性の役割について考えさせていきたい.
著者
前田 敦子
出版者
順天堂大学
雑誌
順天堂医学 (ISSN:00226769)
巻号頁・発行日
vol.48, no.4, 2003-03-28
著者
武藤 芳照
出版者
順天堂大学
雑誌
順天堂医学 (ISSN:00226769)
巻号頁・発行日
vol.48, no.2, pp.202-206, 2002-09-30

水中運動は,浮力により関節への負担を軽くし,全身の余分な緊張を和らげること,水の抵抗のもとでからだを動かすことで,安全にしかも確実に筋力を強化でき,水圧が胸にかかる状態で努力呼吸を行うために呼吸・循環機能を高められ,水による温熱効果あるいは寒冷効果が得られ,骨・関節・筋肉などの血液の流れを改善し,柔軟性を高めることができる.たとえば肉ばなれ・捻挫・骨折などの運動・スポーツで起きやすい傷害は,水中運動ではほとんど起きる危険性がなく,安全である.温水プールでの水中運動の場合には,スポーツ感覚の明るく軽快な雰囲気の中でからだを動かすことを楽しみ,それが結果的にリハビリテーションの効果につながる.このように水中運動は,優れた利点をいくつも有するために,関節痛の運動療法としてきわめて優れている.水中運動の主要な効果には,次のようなものがある.(1)関節の動きを改善する (2)筋力を高める (3)痛みを軽減する (4)リラクゼーション (5)バランス感覚を磨く さらには,関節痛のために,自然に落ち込むことが少なくない中高年にとって,水中運動は解放感を体験でき,自身の上達・改善の様子を理解しやすく,達成感を味わうことができるために,生きる自身と希望をもたらす効果もある.運動中や運動後に,「疲れた!」と感じたり,関節に痛みを感じたりするようならば,それは「やりすぎ!」とみられる.普段地上では思うようにからだの動きができない分だけ,水中で「こんなに動ける!」といううれしさのあまり,つい時間を長くしたり,回数を多くしたりして家に帰ったらへとへとになってしまう例もある.しかし,こうした運動の仕方ではリハビリテーションの効果も得られないばかりか,かえって関節痛を悪化させたり,他の病気・障害を招くことさえある.また,関節痛の水中運動・水泳に適したからだの動きに留意することは,傷害・事故の予防につながる.
著者
堀 賢
出版者
順天堂大学
雑誌
順天堂医学 (ISSN:00226769)
巻号頁・発行日
vol.50, no.2, pp.166-173, 2004-06-30
被引用文献数
1

インフルエンザの流行は高齢者集団や,心臓血管系または呼吸器系に慢性基礎疾患のある患者にきわめて重大な影響をもたらす.適切なワクチンプログラムは,インフルエンザに感染した患者を治療するより安価にかつ効果的に流行をコントロールできる.インフルエンザの流行を払拭するために様々な取り組みが行われているにもかかわらず,豚などの家畜体内でトリ由来とヒト由来のウイルスが自然に遺伝子交雑を起こすために,毎年冬季には定期的な小規模流行が発生する.しかし数年に一度,大きな抗原性の変化を起こした新型ウイルスが誕生し,大規模流行へと発展することがある.香港とベトナムで発生した高病原性鳥インフルエンザ(H5N1)は,久々に出現した人類への新しい脅威となりうるウイルスである.現在ではヒトからヒトへの伝染は報告されていないが,高い致死率ゆえに遺伝子交雑による変化の結果,将来的にヒトで大流行を起こす可能性がある.本稿では,インフルエンザの疫学・臨床症状・合併症・診断・予防手段について,トリとヒトのインフルエンザについてそれぞれ解説する.
著者
阿部 輝夫
出版者
順天堂大学
雑誌
順天堂医学 (ISSN:00226769)
巻号頁・発行日
vol.52, no.1, pp.55-61, 2006-03-31
参考文献数
7

この10年間に,日本の性同一性障害を取り巻く環境は大きく変化した.1997年に日本精神神経学会が性同一性障害(GID)の診断と治療のためのガイドラインを策定し,1998年には日本最初の公に認められた性別適合手術が行われた.そして,2003年に新たな法律が制定され,性別適合手術(SRS)が終了しており,一定の条件が整っていれば戸籍の性別変更が可能となった.この結果,それまで自己判断でホルモン療法や外科的手術を受けていた人達も,性別を変更する目的で,そのために必要な精神科医2名からの診断書を得るため受診するようになった.この当事者達のニードの激しい増加を受けて,各地の大学病院などでも対応の準備が始まっているが,その数はまだまだ十分な状況とは言えない.ここでは,約1500例のGIDの自験例を基に,まずGIDに関する基本的概念を述べる.つまり,primary GIDとsecondary GIDの違い,同性愛とGIDの概念の相違,および今後の問題などについて.そして,実地医家がGIDの診断と治療を進めて行くうえでの留意点について述べたいと思う.・Diamondら日く,「GIDは自分で診断でき,治療法を選択できる唯一の疾患である」と.・GIDと同性愛は,概念が異なる.・MTFが男性を好きになるのはあたりまえの<指向>であり,<嗜好>でもなければ<志向>でもない.・『ガイドライン』への不一致例も,それまでの治療を再評価し,再構築することができる.・特例法の成立により,条件が整えば戸籍の性別が変更できる.
著者
全 峰 深沢 徹 梁 広石 熊谷 安夫 橋本 博史 高崎 芳成
出版者
順天堂大学
雑誌
順天堂医学 (ISSN:00226769)
巻号頁・発行日
vol.52, no.4, pp.580-587, 2006-12-22
参考文献数
17
被引用文献数
1

目的: ヒトアジュバント病という疾患概念があるが,近年その是非がとりざたされている.本研究は,シリコンおよびパラフィンなどを使用した美容形成術の既往のある膠原病もしくは膠原病症状を呈する患者21名についてその臨床的特徴について検討し,疾患の発症における美容形成術との関連について考察する.対象: 1980年1月-2004年12月に順天堂大学医学部附属順天堂医院膠原病内科に通院加療歴があり,美容手術後膠原病症状・所見を呈した患者21例を対象とした.症例の年齢は27歳から75歳まで(平均61,3±10,0歳),性別は女性19例,男性2例であった.方法;(1)対象患者を定型的膠原病と診断できる群(第I群: 14例)と膠原病を示唆する臨床症状・検査所見を認めるが,特定の膠原病の診断基準を満たさない群(第II群: 7例)に分類し,美容形成術から発症までの期間,臨床所見について比較検討した.(2)対象患者群(21例)と1989年に熊谷が報告したヒトアジュバント病症例群(29例)と臨床的特徴について比較検討した.(3)対象患者第I群の疾患のうちわけを,本邦における疾患別発症頻度と比較検討した.結果: (1)発症までの期間は第I群と第II群の比較では有意差はないが,第I群は第II群より自己抗体陽性率が高かった.(2)熊谷が報告したヒトアジュバント病の症例群と自験例とともに強皮症との関連が強く,また自験例ではシェーグレン症候群との関連性も示唆された.(3)本邦における疾患別発症頻度と比較すると,第I群では強皮症およびシェーグレン症候群の比率が高かった.考察: 美容形成術の既往と強皮症,シェーグレン症候群との関連が示唆されたが,発症までの期間が長いことや,実験的には美容形成術で使用された異物が免疫応答を誘導することは証明されていないことから,ヒトアジュバント病と美容形成術との関連は明らかでない.今後,異物に対する患者リンパ球あるいはマクロファージなどの反応性について免疫学的な解析をすることが必要である.
著者
武藤 芳照
出版者
順天堂大学
雑誌
順天堂医学 (ISSN:00226769)
巻号頁・発行日
vol.48, no.2, pp.202-206, 2002-09-30

水中運動は,浮力により関節への負担を軽くし,全身の余分な緊張を和らげること,水の抵抗のもとでからだを動かすことで,安全にしかも確実に筋力を強化でき,水圧が胸にかかる状態で努力呼吸を行うために呼吸・循環機能を高められ,水による温熱効果あるいは寒冷効果が得られ,骨・関節・筋肉などの血液の流れを改善し,柔軟性を高めることができる.たとえば肉ばなれ・捻挫・骨折などの運動・スポーツで起きやすい傷害は,水中運動ではほとんど起きる危険性がなく,安全である.温水プールでの水中運動の場合には,スポーツ感覚の明るく軽快な雰囲気の中でからだを動かすことを楽しみ,それが結果的にリハビリテーションの効果につながる.このように水中運動は,優れた利点をいくつも有するために,関節痛の運動療法としてきわめて優れている.水中運動の主要な効果には,次のようなものがある.(1)関節の動きを改善する (2)筋力を高める (3)痛みを軽減する (4)リラクゼーション (5)バランス感覚を磨く さらには,関節痛のために,自然に落ち込むことが少なくない中高年にとって,水中運動は解放感を体験でき,自身の上達・改善の様子を理解しやすく,達成感を味わうことができるために,生きる自身と希望をもたらす効果もある.運動中や運動後に,「疲れた!」と感じたり,関節に痛みを感じたりするようならば,それは「やりすぎ!」とみられる.普段地上では思うようにからだの動きができない分だけ,水中で「こんなに動ける!」といううれしさのあまり,つい時間を長くしたり,回数を多くしたりして家に帰ったらへとへとになってしまう例もある.しかし,こうした運動の仕方ではリハビリテーションの効果も得られないばかりか,かえって関節痛を悪化させたり,他の病気・障害を招くことさえある.また,関節痛の水中運動・水泳に適したからだの動きに留意することは,傷害・事故の予防につながる.
著者
中村 恭子 古川 理志
出版者
順天堂大学
雑誌
順天堂大学スポーツ健康科学研究 (ISSN:13430327)
巻号頁・発行日
no.8, pp.1-13, 2004-03
被引用文献数
4

The purpose of this study was to verify that what mental factor is affecting the adherence volition of physical exercise. After the method made jogging and aerobic dance carry out for 30 minutes each to 85 juniors in J university (45 males, 30 females), it carried out self-valuation (Subjective movement intensity, Physical competence, Pleasure, Effect of exercise, and Adherence volition), and Profile of Mood States(POMS), and authorized the consciousness item which affects adherence volition.The result was as follows: 1) The subjects thought aerobic dance was very significant ``Pleasure'' and significant ``Efficacy of exercise''more than jogging. So the females' adherence volition to aerobic dance was very significant high. 2) The mental factor that had affected the adherence volition of exercise in common with each group was ``Pleasure'' and ``Physical competence''. 3) By the POMS test, the feeling after aerobic dance was improving very significant. As mentioned above, it was verified that ``Pleasure'' and ``Physical competence'' was one of the important factors as a mental factor that affects the adherence volition of physical exercise. Therefore, in order to make physical exercise continue habitually, the possibility that offer of the exercise program with ``Pleasure'' and ``Physical competence'' will be effective was suggested.
著者
丸井 英二
出版者
順天堂大学
雑誌
萌芽研究
巻号頁・発行日
2006 (Released:2006-04-01)

戦後占領期間中にGHQ/SCAPが軍政部向けに配布していた週報に添付された、急性感染症ならびに性感染症についての報告事項を抜き出し、データベース化するとともにこの時期に特徴的な問題点を拾い出し、検証した。その結果、1)各種感染症の占領期にわたる消長、ならびに全国都道府県別の感染症流行状況を把握することができた。とくに、わが国の厚生省が感染症月例統計を刊行する以前の流行状況を新たに発掘することができたことは意義が大きい。これにより、従来は資料がなかった終戦直後の流行が明らかになった。また、2)本年度は滋賀県彦根市におけるマラリア撲滅対策に注目した。彦根市では対蚊対策が中心で行政が中心となって対策が進められた。市立マラリア研究所の設立がGHQの指示に触発されたものであり、GHQの衛生工学者たちが彦根を訪れていたことも明らかとなった。しかし、今後の課題として残された問題、あるいは今回の研究の結果、改めて疑問として提示された問題も多い。たとえば、わが国で戦前からマラリア5県として知られていた滋賀、福井、石川、富山、愛知のなかで、戦後なぜ彦根市に多く患者が残ったのか、また彦根における市立マラリア研究所設立など地域独自の試みもあるものの、対策の計画ならびに実施において、台湾や沖縄でのマラリア対策の経験がどのように生かされたのかなど、今回の研究によってむしろ解決すべき問題が出てきた感がある。今回の萌芽研究をもとに今後さらに研究を続けていくことで、再び感染症対策が必要とされる現在、こうした歴史的な事実からわが国ならびに世界的な対策へのひとつの示唆を得ることができると思われる。
著者
廣津 信義 宮地 力
出版者
順天堂大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2009 (Released:2009-04-01)

記録系・採点系・格闘技系五輪競技として、陸上(リレー競技) ・体操・柔道を主な対象とし、競技をシステムして捉えて定式化する数学モデリングを行った。リレー競技については、合計タイムの確率分布を算出するモデル、体操については、団体戦での総合得点の確率分布を算出するモデル、柔道については、団体戦でのチーム・選手を相対評価する AHP (Analytic Hierarchy Process)を用いたモデルを作成した。指導者の意見を反映し競技現場で適用可能な数学モデルを提示することができた。
著者
新井 信之 内山 範夫 佐藤 哲郎 佐藤 とも子 植田 さおり 渡辺 和美 大谷 知子 須田 剛
出版者
順天堂大学
雑誌
医療看護研究 (ISSN:13498630)
巻号頁・発行日
vol.3, no.1, pp.9-14, 2007-03
被引用文献数
1

目的:精神障害者生活訓練施設における精神障害者の賃貸アパート契約に至るまでの支援内容とその実際から,住宅確保に向けた課題を明らかにする。方法:T援護寮を退所し単身生活をはじめた29名を対象に,担当職員9名への半構造化面接及び利用者個人記録の内容を項目ごとに整理し、その人数を比較した。研究期間は2001年10月から2002年2月である。結果:対象者の診断名は統合失調症が最も多く24名で,その他は神経症,躁鬱病,人格障害などであった。年齢は平均41.2歳で,最年少20歳,最高齢65歳であった。賃貸アパートに退所した25名(86%)の経済基盤は障害年金や生活保護費の受給が主で,賃貸アパートの契約時に申告する職業がなく,また家族関係の悪化から保証人を家族に依頼できない者も5名いた。更に21名が精神疾患の罹患が契約上不利になると判断し病気を隠していた。結論:精神障害者の賃貸アパート契約では,家賃支払いの基盤となる就労先や保証人の確保,精神疾患に罹患しているという事実の扱いが大きな課題となっていた。今後の支援では,就労先の確保,保証人協会などの保証人制度の充実など具体的かつ実際的な支援の充実の必要性が示唆された。
著者
山岸 明子
出版者
順天堂大学
雑誌
医療看護研究 (ISSN:13498630)
巻号頁・発行日
vol.1, no.1, pp.8-15, 2005-03-19

発達心理学が明らかにしてきた知見を参照しながら,思春期の心の危機を描いた文学作品-村上春樹氏の「海辺のカフカ」-について分析を行った。まず思春期とはどのような時期であり,思春期危機に関与している要因は何か,また危機を乗り越えるためには何が必要なのかに関する発達心理学の見解について述べ,それらと関連させながら,15才の主人公がどのような問題をかかえ,にもかかわらずなぜ危機を乗り越えることができたのかについて分析した。危機的状況を乗り越えることを可能にした要因として,1)情緒的及び実際的に支えてくれる人との支持的で暖かい関係,2)自分が必要とされている価値ある存在であることの実感と,「母親の過去」の事情を理解し許す気持ちになったこと,3)自立して生活する能力や,自己を内省したりコントロールする力-自我の強さをもっていること,が抽出された。それらは発達心理学が明らかにしてきたこととほぼ対応するものであった。
著者
天野 篤 松下 訓 山本 平 稲葉 博隆 桑木 賢次
出版者
順天堂大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2013-04-01 (Released:2014-07-25)

局所脂肪は隣接臓器の状態を反映するとともにその臓器にも影響を及ぼすことが示唆されている。本研究では動脈硬化性疾患の代表である虚血性心疾患に対する手術の際に皮下脂肪、冠動脈周囲および内胸動脈周囲の3か所の脂肪を採取し解析、脂肪の質にどのような差があるのか検討を行った。一部の炎症性サイトカインや炎症性マクロファージの発現は冠動脈周囲で最も高く、皮下で最も低かった。一方で血管新生関連因子は内胸動脈周囲で最も高かった。線維化マーカーは冠動脈周囲の発現が最も高く、コラーゲンは皮下脂肪で最多であった。このように皮下脂肪と血管周囲脂肪、さらにはその血管の状態により異なる脂肪のプロファイルを示していた。
著者
野田 洋子
出版者
順天堂大学
雑誌
順天堂医療短期大学紀要 (ISSN:09156933)
巻号頁・発行日
vol.12, pp.55-65, 2001-03-29
被引用文献数
1

月経の経験は女性の生涯における健康,QOLを考える上で重要な要因である。本研究は若年女性(18-22歳の女子短大生)の月経の経験と関連要因,ことに楽観性・悲観性との関連を明らかにするものである。記名式自己記入式質問紙法による配表調査を行った結果,2,391名の有効標本が得られた。分析の結果,月経周辺期の変化,月経観,月経のセルフケア行動に楽観性・悲観性が関連していることが明らかとなった。1.オプティミストは月経周辺期の変化を低く捉える傾向にある。2.オプティミストは月経をポジティブに捉える傾向にある。3.オプティミストは自尊感情,自己の性に対する満足度が高く,ストレスを感じることが低い傾向にある。4.オプティミストは月経痛に対し積極的セルフケア行動をとる傾向にある。5.ペシミストは月経をネガティブに捉える傾向にある。以上の結果は,今後月経周辺期変化の強い者への看護面接を行っていく上での考慮すべき要件となる。