著者
ベケット キャスリーン サッソン セオドア
出版者
日本犯罪社会学会
雑誌
犯罪社会学研究 (ISSN:0386460X)
巻号頁・発行日
no.29, pp.27-50, 2004-10-18

この論文は,米国を大量拘禁の分野において世界のリーダーに押し上げた新たな法律や実務について,従来とは異なる視点からの説明を試みたものである.近時の厳罰化の原因を,悪化する犯罪情勢や世論の怒りや復讐心に求めるのは正しくない.そうではなく,著者らは,厳罰化は,犯罪,麻薬,貧困といった社会問題について,保守派の政治家が,それらの原因が差別ではなく生ぬるい寛容さによるものであると問題を摩り替える(再構成する)ことに成功したことを反映しているに過ぎないと主張しているのである.こうした保守派の試みは,1960年代の公民権運動に呼応して始まり,1980年代には,政策を福祉から治安に舵取りするキャンペーンの一環として続いている.そして,1990年代には,二大政党が共に麻薬・犯罪との戦争に参戦した.しかし,結局,大量拘禁は,貧困家庭だけでなく,地域社会にも過重な負担をかける結果となり,最近では,力で犯罪を押さえ込もうとする法律を見なおそうとする努力が支持されるようになり,よりバランスの取れた政策を模索する動きが見られるようになっている.

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