著者
山内 祐司
出版者
日本犯罪社会学会
雑誌
犯罪社会学研究 (ISSN:0386460X)
巻号頁・発行日
no.29, pp.114-127, 2004-10-18

この論文は,学校との社会的絆がどのようにして問題行動を抑制するかについての説明を試みたものである.「社会的絆は,感受性と規範意識を向上させ,その結果問題行動を抑制する」という仮説を立て,2002年2月に実施した高校生女子385名に対する質問紙調査のデータにより,学校の問題行動抑制機能を観察した.得られた知見は以下の5点にまとめることができる.1 社会的絆の問題行動抑制機能は,絆が感受性と規範意識を高めることによるという仮説は否定されない.ただし,感受性と規範意識が絆をつくるという逆の関係も否定されない. 2 問題行動をする友人との絆により逸脱的な規範の取り入れが起こり,その結果問題行動が促進されるという仮説は否定されない.ただし,逸脱的な規範が問題行動をする友人との絆をつくるという逆の関係も否定されない. 3 教師との絆の問題行動抑制効果は強く,学校に関する要因の中で最も強い抑制効果を生み出している. 4 友人との絆の問題行動抑制機能はデータ上では観察できない. 5 学習を中心とした学校活動へのコミットメントは,「学校の信用失墜への配慮」という感受性及び規範意識をそれぞれ高め,その結果問題行動を抑制するという仮説は否定されない.ただし,感受性と規範意識が学校活動へのコミットメントをつくるという逆の関係も否定されない.

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