著者
坂口 慶治
出版者
京都教育大学
雑誌
京都教育大学環境教育研究年報 (ISSN:09193766)
巻号頁・発行日
vol.6, pp.51-82, 1998-03-31

京都府の北端に位置する丹後地方は,わが国における廃村の先行的,集中的な発生地帯である。本稿では,その地域的な発生機構の解明の中で,とくに自然環境との関連性について考察した。元来,廃村化は集落の生業・規模・立地密度等の文化社会形態に関わる人文現象であるために,自然環境との関連性についても,集落の立地態様を規定した立地受容要因としての側面と,それを介しての立地障害要因としての側面を視野に入れて考察する必要がある。ここでは地形的には中低山性山地ながらも,急斜面によって多数の山地塊に分断されている構造地形的特性が,中小規模の山地集落の,分散立地形態での高い立地密度を生み,それが廃村の多発現象の一要因となった。その結果,各山地塊間では,それぞれの構造地形的特性を反映して,廃村の発生状況に大きな差がみられた。また,地質的には,多種類の地層が錯綜分布し,その独特のモザイク的分布と多彩な接触構造が,自給型集落の高い立地密度を生み,その集落の小規模・多様性が廃村の多発現象の一要因となった。それ故,各山地塊間での廃村の発生状況の差にも,それぞれの地質構成の差異が反映している。さらに,構造地形や地質条件と密接に関連して現われる小地形が,集落の立地態様をより直接的に規定している側面が認められ,廃村化に関わる自然環境の総合的指標として,小地形の分布構成が有用であることが判明した。

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