- 著者
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青木 博史
- 出版者
- 日本語学会
- 雑誌
- 日本語の研究 (ISSN:13495119)
- 巻号頁・発行日
- vol.1, no.3, pp.47-60, 2005-07-01
古典語における<コト>を表す補文の名詞節には,「準体型」と「コト型」の2つがある。「準体型」が主語として用いられる場合,その述語は状態性のものに限られる,といった制限がある。目的語として用いられる場合も考え合わせると,「準体型」は,感覚・感情,判断等の「対象」としてのみ用いられているといえる。これに対し,「コト型」にそのような使用制限はなく,両者は性格を異にしている。「コト型」は,古代から現代に至るまで,その機能をほとんど変えることなく引き継がれたが,「準体型」の機能は,「ノ型」が引き継ぐ形となった。「ノ」は<モノ>を表す代名詞が文法化し,<コト>を表す形式へ拡張したものである。このような「ノ」の発達が,「準体型」を衰退させたものと考えられる。