- 著者
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陳 君慧
- 出版者
- 日本語学会
- 雑誌
- 日本語の研究 (ISSN:13495119)
- 巻号頁・発行日
- vol.1, no.3, pp.123-138, 2005-07-01
日本語の後置詞には動詞の中止形を含み,動詞から派生したと想定できるものがある。そのうちのヲモッテ,<原因>のニヨッテは文法化現象の例とされてきたが,それらは訓読語研究で漢文訓読との関連が指摘されてきたものでもある。それらが他言語からの借用なら,動詞からの意味変化として文法化理論から説明するには無理がある。本稿は,文法化研究が扱うヲモッテの多義性が借用かその一般化によるもので,上古の<道具>を表すモチ(テ)こそが動詞モツからの文法化の例であること,ニヨッテの文法化の前提とされてきた動詞の意味が漢文系資料に偏る一方,上古の和文系資料に存在していた動詞ヨル・<根拠>のニヨッテからの文法化が理論的に説明可能なことを検証し,文法化研究で誤った議論がされてきたことを指摘する。漢文訓読との関連が指摘される機能語は少なくないが,日本語における文法化研究では,借用現象を混同しないことが重要なことを主張する。