著者
塚口 眞佐子
出版者
大阪樟蔭女子大学
雑誌
大阪樟蔭女子大学学芸学部論集 (ISSN:18807887)
巻号頁・発行日
vol.44, pp.137-149, 2007-03-20

デザイン史を観るに1860年代から1930年代までの70年間とそれ以降の70年間を比較した場合、前者がいかに劇的な展開を果たしたか驚くばかりである。歴史様式の混乱状態からモダンデザインへの胎動期、そして誕生、成長まですべてを包含している。それだけに関係が複雑に交差し、過去の様式史とは異なる多元的な理解が必要となる。また、担い手もこれまでとは異なり、勃興する中流階級がデザインの潮流を支えた点も注目に値する。本稿ではこの期間のうち19世紀のデザインをリードした英国のヴィクトリアン期、中でも中流階級のインテリアに照準を当て、様相の背景を探ることで、デザイン史が展開した必然性に迫り解明することをねらいとしている。 建築やインテリアは社会状況や時代精神、生活意識の反映である。デザインのあり方にはこれらの理解が欠かせない。第1章では、モダンデザインの胎動期となったヴィクトリアン期のインテリアの概観とともに、時代精神、特に階級意識とジェンダーをからめてこの様相に迫ってみる。第2章では、装飾品の実態を詳述することで、装飾品に仮託された生活意識を浮かび上がらせる。第3章では、第1章と第2章で明らかにした過剰な装飾の様相から発生した改革運動とその展開を取り上げる。ここではモダンデザインへの移行に大きな役割を果たした日本の影響を軸に述べている。いずれの章も具体的事項を語ることで全体像を浮かび上がらせたいと考える。

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CiNii 論文 -  装飾デザインの背景を探る : 英国中流階級に見るヴィクトリアンスタイルとデザイン界の展開 https://t.co/VFX6KlYBuF #CiNii

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