著者
岡本 恵子 井上 美智子 大政 里美 新井 志津子 山口 美穂 錦織 絵理 川崎 光記
出版者
公益社団法人日本理学療法士協会
雑誌
日本理学療法学術大会 (ISSN:02893770)
巻号頁・発行日
vol.2006, pp.E1171-E1171, 2007

【はじめに】軽度運動機能障害児(以下、軽度児)は、運動制限や学習の遅れに加え、ソーシャルスキル獲得や自我発達の遅れの課題も抱えているが、運動機能以外の課題に対する支援や周囲の障害理解が不足している。この結果、集団の中で自分を認められる経験や達成感を積めず、小学校高学年頃から孤立することが多くなる。当センターでも、学校の中で自己実現できない学童児が多いことが個別治療を通じて見えてきた。<BR> よって今回、軽度児が集団の中で認められる経験を積み、学校の中で主体的な生活を送れるように、「わいわいクラブ」を立ち上げ、集団による生活支援に取り組んだので報告する。<BR>【目的】軽度児同士の仲間を作り、集団の中で自己実現ができるように支援する。集団の中で軽度児の課題を明確化し、主体的に生活する力を蓄えられるように支援する。<BR>【対象】小1~小6の応用歩行から杖歩行可能な軽度運動機能障害児11名。地域の小学校に通い、知的障害の程度も軽度。<BR>【支援内容】月に1回、放課後に1.5時間のクラブを開催。活動は、楽しくて達成感を積めるもの・集団や仲間を意識しやすいものとし、1年目はクッキング、2年目は太鼓の演奏を行った。1回の内容は、ウォーミングアップのゲーム→メインの活動→クールダウンのおやつタイム。支援スタッフは、保育士6名とPT1名。<BR>【支援経過】第1に、環境設定と精神的サポートを支援の土台とした。環境設定として、活動中の姿勢変換を減らし楽な姿勢で活動に集中できるようにした。説明や指示は単純明確にし絵や具体物も提示して、内容を十分に理解した上で活動を開始した。精神的サポートとして、自分なりにやってみることが大事だと伝え、その後に認められる嬉しさを実感できるようにした。これらの結果、苦手意識を持たず十分に達成感を積め、受身ではなく積極的に活動参加できる児が増えた。<BR> 第2に、発表や意見交換の場を設け集団意識が芽生える工夫をした。集団の中で自分について話すことから始め、徐々にクラブの仲間について発表するテーマに変えていった。すると、自分中心の言動が多かった児が、友達にも目を向け周囲の状況に沿った言動をとることが増えた。<BR> 第3に、チーム制の活動を通じ集団の中で主体性を引き出す工夫をした。チームで一人ずつに役割を作り、相談し工夫する場面も設けた。この積み重ねにより、大人の介入が減り児同士で活動を展開することが増えた。<BR>【まとめ】今回の支援を通じて、児が自分を出せる場・自信を持てる場を作ることが必要だと分かった。今後は、低学年児には精神発達のサポート・高学年児にはソーシャルスキル獲得という生活年齢課題別の支援を工夫することが課題である。<BR> また、生活支援をするには個別治療だけでは限界があり集団での取り組みが重要であると実感した。今後も、軽度児に関わることの多いPT自身が広い視点を持ち、集団による生活支援に取り組んでいきたい。

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こんな論文どうですか? 軽度運動機能障害児の集団による生活支援:わいわいクラブの取り組み(岡本 恵子ほか),2007 https://t.co/jwFU2pbmza

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