- 著者
-
平井 友行
- 出版者
- 千葉商科大学
- 雑誌
- 千葉商大論叢 (ISSN:03854558)
- 巻号頁・発行日
- vol.44, no.3, pp.35-43, 2006-12-31
我が国では,2001年3月期,退職給付会計が導入された。退職給付会計導入は,母体企業にその年金運用の重要性を認識させた。特に定給付型年金運用の資産サイドにおける政策アセット・ミックス策定過程で前提条件については,その「予測性」が十分に意識されるべきであり,ターゲットとしている投資対象期間が異なることなども,母体企業及び企業年金双方に理解されるべきである。そして,そういった理解の下で,基本政策アセット・ミックスが策定されることがより安定的な確定給付型企業年金の運営に繋がっていくものと考えられる。一方,確定拠出型年金運用を含む個人資産運用においては,寧ろ,保有資産に加え,個人のライフ・サイクルのいずれの段階においていかなるキャッシュ・イン・フロー,アウト・フローが生じるかという負債サイドを常に正確に意識した上で,資産配分(政策アセット・ミックス)を考えることが重要であり,それが「運用の基本方針」である。確定給付型運用が陥った資産サイドからのみ年度「目標リターン」を設定する様な愚はおかすべきではない。個人が資産運用に入って間もない我が国でこういったことを丁寧に個人にアドバイスしていくFPの活動はますますその重要性を高めていくものと思料される。