著者
中村 誠太郎
出版者
素粒子論グループ 素粒子研究編集部
雑誌
素粒子論研究 (ISSN:03711838)
巻号頁・発行日
vol.82, no.2, pp.94-106, 1990-11-20

標準模型は電磁相互作用と弱い相互作用を統一し,ゲージ理論の基礎の上に立って広い範囲の現象の説明に成功していると信じられている。しかしくわしくしらべると弱い相互作用に関与する重粒子カーレントはnon-leptonic decayとsemi-leptonic decayとで相互作用の選択律がちがう,また共に普遍的にV-A型では説明できない,これはたとえクオークの力学が完成したとしても,それだけでは説明できるかどうか分らない程複雑である。また巨大質量をもつウィーク・ボゾンの質量を説明すべく導入されたヒグスボゾンは定義が不十分で実験以前に問題が残っている。さらに,ワインバーグ角やカビボ角のような任意常数の値を現象毎に調節していることは完全な理論とはいえない。われわれはこのような不完全な普遍性をもつ標準理論をやめて,まず素粒子の多重項と強・弱の二つの相互作用の中から,素粒子の対称性の理論を建設し,これにもとづいて,相互作用の選択律を推定した。軽粒子の相互作用は,ミンコフスキー空間の中のhelicityの反転に対する不変性から導いた。non-leptonic decayではこの不変性は破れるが,更に電荷の反転をつづけて行えば不変性が成立つという複合反転を仮定し,実験との一致をえた。semi-leptonic decayに対しては,湯川理論の立場にもどり,まず重粒子カーレントからメソンへ移り,次にメソンがウィークボゾンをへて軽粒子カーレントにつながるというモデル(Strong meson dominance)を採用し,実験を説明することができた。光子の他に質量ゼロ近くに中性のウィークボゾンδがありうるかを調べた。

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