著者
菅野 覚明
出版者
日本宗教学会
雑誌
宗教研究 (ISSN:03873293)
巻号頁・発行日
vol.81, no.2, pp.309-332, 2007-09

この論文の狙いは、日本の神話的世界の中に、仏教がどのような径路を経て入り込み、どのような形で定着したのかを明らかにすることにある。神仏習合という現象についての従来の研究は、教義や制度の側面に重点が置かれがちで、信仰者の内面の問題として本質を探究した研究は数少ない。本論文は、人間精神の最深部、すなわち意識と実在との関係において、神と仏の結合が何を意味していたのかを考察する。日本神話に登場する理想的人間は、神と交わる人々である。彼らに共通する特徴は、激しい感情(これは和歌を詠む能力に対応する)と、生への執着(死への恐怖)である。本居宣長は、この特徴を「真心」という概念であらわした。仏教は、神話的人間の内面を、新たな知によって捉え直し、彼らの内面のある部分を深め、またある部分の不足を補うものとして登場した。そのことによって仏教は、神を信仰する精神にとって不可欠なものとして、日本に定着したものと考えられる。

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