- 著者
-
藤原 敏行
- 出版者
- 大阪体育大学
- 雑誌
- 大阪体育大学紀要 (ISSN:02891190)
- 巻号頁・発行日
- vol.37, 2006-03
本研究では、両足旋回の力学的構造を分析し、指導に有益な知見を得ることを目的とした。17名の大学男子体操競技選手に、フォースプレートを用いて作成したあん馬モデル上で両足旋回を行わせ、ポメル反力の分析と3次元動作分析を行った。さらに被験者の中から5名ずつ抽出した熟練群と非熟練群を比較し、以下の知見を得た。(1)鉛直反力は両手支持局面で体重より大きく、片手支持局面で体重より小さくなっており、馬体との衝突を回避する上下動を生み出していると考えられた。(2)水平反力の法線成分は常に回転中心方向へ発揮されており、両手支持局面で大きなピーク値を示した。また、水平反力の接線成分の変化は身体重心の水平速度変化と対応していた。よって、水平反力は回転運動のための求心力と接線加速力を生み出していると考えられた。(3)身体重心の水平速度は両手支持局面で極小値、片手支持局面で極大値を示したのに対して、体幹重心と両足関節中点の水平速度は逆位相の変化を示した。これによって、両手支持局面では身体重心回りの身体の回転、片手支持局面では支持手回りの身体重心の回転が、それぞれ優位に行われていることが示唆された。(4)身体の屈曲角度は熟練群の方が非熟練群よりも小さい傾向にあったが、側屈角度は両群間で差が見られなかった。また、身体の側屈は馬体との衝突を回避し、さらに下肢の水平面回転にも貢献していると考えられた。従って、身体の屈曲は技術欠点として避けながらも、身体の側屈の作用は理解しておく必要があると考えられた。