- 著者
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加藤 滋紀
- 出版者
- 目白大学
- 雑誌
- 目白大学総合科学研究 (ISSN:1349709X)
- 巻号頁・発行日
- vol.1, pp.11-21, 2005
視聴率については、テレビを"元気にする源"として肯定的にとらえる意見と、テレビを"悪くする元凶"と否定的にとらえる考え方が従来からあった。2003年秋の日本テレビの視聴率不正操作事件の発覚がきっかけとなって、多くの識者・関係者が視聴率について言及し、放送界の第三者機関「放送倫理・番組向上機構」が「視聴率」と併用すべき「視聴質」の検討を放送界に促すなど、視聴率をめぐる議論がにわかに活発になった。そうした声に応えるように、日本民間放送連盟と日本テレビは、それぞれ有識者らによる研究会を設置したが、どちらも視聴率に替わる新しい番組評価基準を打ち出すには至らなかった。しかし、最近、放送局の中には視聴者と結んで独自の番組評価を始めたところもあり注目される。本稿では、最近の視聴率をめぐる動きや意見を整理するとともに、歴史的視点からも検証し、視聴率問題を通して放送倫理の高揚と放送局のあり方について考察した。