著者
高橋 均 飯田 克実 高橋 保夫
出版者
日本草地学会
雑誌
日本草地学会誌 (ISSN:04475933)
巻号頁・発行日
vol.17, no.3, pp.161-169, 1971-10-29

水田裏作にイタリアンライグラスを栽培する場合に,水稲収穫後の播種適期間が短かいので栽培面積を拡大することが困難である。そこで,イタリアンライグラスの省力播種法とくに不耕起まき栽培について検討した。1)イタリアンライグラスの発芽にとっては,耕起の有無・砕土程度の精粗にかかわらず地表面に播種したままの方が良く,覆土すると発芽率が低下した。すなわち,最も省力的な不耕起まきによって十分の発芽苗立を確保できるが,降雨が不十分で土壌水分含量が低い場合には不安定である。2)圃場の播種準備作業を省略して播種床の条件が悪いほどイタリアンライグラスの初期生育が不良であった。とくに不耕起まき栽培では耕起まき栽培に比べて初期生育が劣り,1番刈収量が明らかに低下し,2番刈でもやや減収した。3番草以降には耕起の有無の影響はみられなかった。3)不耕起の場合には土壌の固相割合が高くて気相割合が低く,硬度が高いことも減収の一因になっていると考えられるが,土壌中の可溶態N含量の低下がイタリアンライグラスの初期生育を抑え,1〜2番刈収量を低下させる大きい原因であると考えられる。4)土壌中の可溶態N含量の低下を補なうために晩秋に追肥を1回追加すると,1番刈収量は耕起した場合と同程度になった。すなわち,土壌中のN含量を高めてイタリアンライグラスの生育を維持するには,耕起作業を省略して晩秋の1回の追肥におき代えることが可能である。5)水分蒸発に伴なって土壌が収縮する際に生ずる亀裂から,雨水に肥料分が溶解して流亡することが,土壌中可溶態N含量の低下の大きい原因であると考えられる。したがって,この溶脱の程度は亀裂の発生に影響する土壌水分の減少程度・土性あるいは水稲の栽培法等により異なり,イタリアンライグラスの減収程度および追肥の効果もこれらの条件によって異なるものと考えられる。

言及状況

Twitter (1 users, 1 posts, 0 favorites)

こんな論文どうですか? 水田裏作イタリアンライグラスの省力播種法とくに不耕起まき栽培,1971 http://ci.nii.ac.jp/naid/110006463511

収集済み URL リスト