著者
飯田 克実
出版者
日本草地学会
雑誌
日本草地学会誌 (ISSN:04475933)
巻号頁・発行日
vol.11, no.2, pp.98-103, 1965-09-30 (Released:2017-07-07)

(1)那系4号の種子を8月下旬から翌年の9月下旬まで,ほぼ15日おきに播種して,発芽と生育および収量を調査した。(2)発芽や生育と気温との関係を,日平均気温で示すのは必ずしも最良のものではなく,最高および最低気温や有効および無効温度などの考え方も必要である。しかし,便宜的に日平均気温を指標として用いると,暦日で整理するよりも合理的である。(3)発芽は日平均気温6〜23℃がよく,12〜26℃が発芽期までが短かい。5〜20℃の発芽期は,播種後の積算日平均気温が約110〜130℃なる日であった。5℃以下の播種は著しくおくれ,24℃上以の播種は発芽が悪かった。(4)早春の節間伸長は,播種期の早いほど暦日では早かった。しかし,約1cmになるまでの発芽後日数は,早播きほど長かった。(5) 7月までの合計収量は早播きほど多く,8〜10月上旬播はa当たり1.8〜1.5トンの生草をえた。1カ年間の合計収量は8月播が最も多かった。1日当たりの収量は8〜10月播と2〜3月播が多く,11月中旬〜1月中旬播は少なかった。(6)日平均気温が約5℃以上のときに生育量の増加,10〜20℃で旺盛な生育,20〜25℃では高温ほど生育不良,25℃以上で著しい夏枯れをおこした。その結果,4〜6月は生育旺盛で生産効率が最も高く,ついで10〜11月の生育もよく生産効率も高かった。なお,1〜2月は生育が停滞し,7月中旬〜8月は生育不良であった。(7)粗蛋白質含有率は多肥栽培のため,何れの刈取期でも著しく高く,播種期の差は明らかでないが,6月の刈取では早播区はやや低かった。(8)イタリアンライグラスの上手な栽培は,春と秋の2回ある生育適温を有効に利用して生産効率の高い多収をあげることであり,初秋に日平均気温が25℃以下になれば,できるだけ早播きすることでるあ。
著者
高橋 均 飯田 克実 高橋 保夫
出版者
日本草地学会
雑誌
日本草地学会誌 (ISSN:04475933)
巻号頁・発行日
vol.17, no.3, pp.161-169, 1971-10-29

水田裏作にイタリアンライグラスを栽培する場合に,水稲収穫後の播種適期間が短かいので栽培面積を拡大することが困難である。そこで,イタリアンライグラスの省力播種法とくに不耕起まき栽培について検討した。1)イタリアンライグラスの発芽にとっては,耕起の有無・砕土程度の精粗にかかわらず地表面に播種したままの方が良く,覆土すると発芽率が低下した。すなわち,最も省力的な不耕起まきによって十分の発芽苗立を確保できるが,降雨が不十分で土壌水分含量が低い場合には不安定である。2)圃場の播種準備作業を省略して播種床の条件が悪いほどイタリアンライグラスの初期生育が不良であった。とくに不耕起まき栽培では耕起まき栽培に比べて初期生育が劣り,1番刈収量が明らかに低下し,2番刈でもやや減収した。3番草以降には耕起の有無の影響はみられなかった。3)不耕起の場合には土壌の固相割合が高くて気相割合が低く,硬度が高いことも減収の一因になっていると考えられるが,土壌中の可溶態N含量の低下がイタリアンライグラスの初期生育を抑え,1〜2番刈収量を低下させる大きい原因であると考えられる。4)土壌中の可溶態N含量の低下を補なうために晩秋に追肥を1回追加すると,1番刈収量は耕起した場合と同程度になった。すなわち,土壌中のN含量を高めてイタリアンライグラスの生育を維持するには,耕起作業を省略して晩秋の1回の追肥におき代えることが可能である。5)水分蒸発に伴なって土壌が収縮する際に生ずる亀裂から,雨水に肥料分が溶解して流亡することが,土壌中可溶態N含量の低下の大きい原因であると考えられる。したがって,この溶脱の程度は亀裂の発生に影響する土壌水分の減少程度・土性あるいは水稲の栽培法等により異なり,イタリアンライグラスの減収程度および追肥の効果もこれらの条件によって異なるものと考えられる。