著者
西村 格 安達 篤
出版者
日本草地学会
雑誌
日本草地学会誌 (ISSN:04475933)
巻号頁・発行日
vol.21, no.3, pp.213-222, 1975-10-25

日本の亜寒帯に属する代表的な放牧草地である北海道の野付崎で1972年から1974年にかけて年次変化と季節変化の植生調査をおこなった。1)野付崎の放牧草地植生の種類組成は,オオウシノケグサ,センダイハギ,チャシバスゲ,エゾヌカボなどを主体とし,北海道の海岸草原にみられるハマナス,ハマフウロ,エゾツルキンバイ,エゾカワラマツバ,イワノガリヤスなどのほか北海道の放牧草地に常在するナガバグサ,シロツメクサなど約50草種で構成されていた。2)7月10日前後の定期調査時期には,最も多くの種類の植物がみられ,年間を通じてオオウシノケグサ,センダイハギが優占する。春の5月には,ヒメイズイ,クロユリ,ザラバナソモソモ,などが他の時期よりも増加し,夏には,センダイハギ,エゾヌカボ,エゾキンポウゲ,ハマフウロ,ツマトリソウなどが他の時期よりも高い割合を示し,秋にはナガバグサ,イヌゴマ,ナミキソウ,シロツメクサ,テンキグサ(ハマニンニク)などが割合の増加する草種としてあげられた。3)植生の年次変化は,オオウシノケグサ,センダイハギ,チャシスバゲなど基幹となるものは大きな変化がなかった。しかし,センダイハギ,イワノガリヤスなどは減少の傾向にあり,チャシバスゲ,シロツメクサ,スズメノヤリなどは増加する傾向を示した。4)野付崎の海岸砂丘草原の植生は,長草型のセンダイハギーイワノガリヤス群落から短草型のオオウシノケグサ群落へと遷移していると考えられた。家畜や車め踏圧によってシロツメクサ,オオバコ,スズメノカタビラなどは増加する傾向がみられた。5)遷移度は3年間の年次的変化はみられなかったが,放牧草地では,ケージ内に比較して明らかに減少した。

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